2016年、わずか10型のコートからスタートした「ebure」(エブール)。ブランドの誕生から、ロンハーマンは歩みをともにしてきました。10年という節目を迎えた今、初となるカプセルコレクションを展開します。異なる個性を持ちながら、どこか深いところで響き合うebureとロンハーマン。ebureデザインディレクター兼チーフデザイナー古屋ユキさんとロンハーマン ウィメンズバイヤー篠崎茜が、これまでの10年、そしてその未来について、語り合いました。
「ebure」(エブール)デザインディレクター兼チーフデザイナー古屋ユキさん(左)とロンハーマン ウィメンズバイヤー篠崎茜。「ebureがスタートする前に、スタッフルームにお邪魔したのですが、皆さん服づくりのプロフェッショナル集団で、どんなアイテムが生まれるのか楽しみでした」と篠崎
篠崎:ebureというブランド名もまだなかったころ、「さらに人生を楽しむという気持ちを掻き立てる服」というコンセプトを聞いて、「どんなブランドなんだろう」とすごく想像力をかき立てられたんです。ebureのデザインルームへ行くと、ラック一本にコートが10型だけ並んでいて。全部に袖を通したことを覚えています。
古屋:ebureは本当にゼロから始まったブランドでした。小さな部屋に数人だけが集まってスタート。最初はロンハーマンに商品を置いていただくところから始まったんです。この10年でお店もお客さまも増えました。ブランドがこれからというときにパンデミックを経験したり、本当にいろいろなことがありましたが、振り返るとあっという間でした。
篠崎:最初に感じたのは、私たちとは服の成り立ちが全然違うということでした。ロンハーマンは、カリフォルニアの空気感やカルチャーを背景にオリジナルをつくっています。一方でebureは、デザイン・パターン・生産など各分野のプロフェッショナル集団が緻密に服をつくっている。そこがとても刺激的でした。
古屋:私はもともとロンハーマンのお客さんでもあったので、感度のいい人たちがつくる、感度のいいお店という印象をずっと持っていました。訪れるだけでワクワクするし、心地いい空気が流れている。そういう存在でしたね。
篠崎:私から見ると、ebureはひと言で言えば「緻密さ」です。素材や仕立てはもちろん、気づかないような細部まで考え抜かれている。一方でロンハーマンは「抜け感」を大切にしている。性質は違うけれど、だからこそ共鳴するものがあるんじゃないかなと思っています。
ebure×Ron Herman 10th Anniversary Collection。ロングコートからジャケット、ニット、デニムまで「ワードローブ」をテーマにしたラインナップを展開。両者がアイデアを出し合って、ゼロから服づくりに取り組んだ。「とても、ワクワクして楽しい時間でした」と二人とも口をそろえる
古屋:ebureは、「大人のための上質な服」「エレガントな服」と言っていただくことが多いです。でも、ただ上品でコンサバティブな服をつくりたいわけではありません。当初から、「さらに人生を楽しむという気持ちを掻き立てる服」ということを大切にしてきました。リラックスできて上質な日常を楽しめる大人の服。ロンハーマンとの関係性が、そういうebureの一面を自然に引き出してくれている気がします。
篠崎:古屋さんご自身が本当にファッションが好きで、その情熱は私たちと一緒だといつも感じています。
古屋:私自身、長くデザイナーを続けてきて、少しずつ目指すものも変わってきました。キャリアを重ねるほど、華美なものよりも、削ぎ落とされた、素敵な素材で長く着られる服をつくりたいと思うようになって。ebureでは、上質な素材を選んで、仕立てにもこだわっている。自分がつくりたかったものが、少しずつかなっているような感覚があります。

「置いているだけですごく雰囲気があるTシャツをつくろうと25SSに生まれたのが、こちらの半袖バージョン。26FWに登場するロンTは、シンプルで華美なデザインではないのですが、何か気になって手に取ってしまうような一枚を目指しました」と篠崎。古屋さんが追求する「上質な日常」を体現するアイテムの一つ
篠崎:この10年間で変わったことは、お互いに規模が大きくなったことだと思います。店舗もスタッフも増えました。でも変わらないのは、ロンハーマンの抜け感とebureの緻密さをかけ合わせたら、どう面白くなるだろう、と考え続けているところです。
古屋:そこは本当に変わらないですね。
篠崎:別注でも、ebureのインラインにはない色に挑戦させてもらったり、スタイリングやルックの見せ方も全然違ったりします。同じ服でも、ロンハーマンに並ぶと違う表情に見える。それがすごく面白いんです。
古屋:お客さまも、その中から「こうありたい自分」を宝探しのように見つけられるんじゃないかなと思います。実際、「ebureをロンハーマンで何度も買ったことがある」と言ってくださるお客さまもいて、そういう交流が生まれているのもうれしいですね。

ホームスパンジャケットはレイヤードも楽しめるほどよいサイズ感。古屋さんの着こなしのようにブルーデニムとの相性も抜群。上質かつベーシックながら、カラークロスや袖のストライプ裏地、共地のくるみボタンなど、さりげないこだわりと遊び心も。「ただ上品で質のいい洋服では終わらせたくない。ワクワク感が絶対に必要」と語る古屋さんの想いが込められている
篠崎:今回、10周年を迎えると聞いた時も、最初は「えっ、もう10年!?」という感じでした。そこから「せっかくなら何か一緒にやりたいですね」という話になって、「どうせやるなら、しっかりと一つのコレクションにしたい」と。
古屋:私は最初、いつものコラボレーションのように、カットソーなど何か一つでもできれば、ぐらいの気持ちだったんです。でもロンハーマンから、ラックでまとまりのあるコーディネートとして見せたい、というアイデアをいただいて。それがすごくうれしくて、ワクワクしました。
篠崎:そこから「一人の女性のワードローブ」というイメージが広がっていきました。ebureといえばコートだからコートはマスト。ジャケットを軸に、ニットやデニム、カットソーも合わせたい。一つひとつが魅力的なのはもちろん、このラックの中にある服で自由にスタイリングを楽しめる。そんな一人の女性のクローゼットをイメージしました。
古屋:自分の家のクローゼットがそのままこれだったら楽しいよね、という感覚でした。デニムとジャケットを合わせてもいいし、その上にコートを重ねてもいい。どれを手に取って、どう組み合わせても成立するような自由なワードローブにしたかったんです。
篠崎が着用しているプルオーバーニットは、取り外しが可能なシャツ衿を組み合わせた、まるでシャツをレイヤードしているようなデザイン。衿を外すとシンプルなクルーネックとしても活用でき、バリエーションを楽しめる
篠崎:古屋さんの言葉で印象的なのは「真逆のものをebureの中で表現してきた」ということ。たとえばメンズライクなジャケットに柔らかな素材を使ったり、マニッシュなものに女性らしさを加えたり。そういう相反するものの組み合わせも、今回のコレクションのヒントになりました。
古屋:10周年を記念した今回のカプセルコレクションは、本当にゼロから一緒につくりました。いつもは完成したサンプルを見ていただくのですが、今回はサンプルが仕上がる前に、デニムやニット、カシミアなど、さまざまな生地を机いっぱいに並べて、みんなで重ねながら「これ、すごくいいね」「楽しくなりそう」と盛り上がって。
篠崎:私たちも、あの時間はすごく楽しかったです。素材の段階から一緒に考えるというのは、普段あまりないことなので、とても特別な経験でした。
古屋:サンプルができるずっと前なのに、つくりたい世界がもう見えていたんですよね。日々デザインをしていると、数字やスケジュールに追われることもあります。でもあの時は、「服をつくるって、こういう楽しい気持ちだったな」と改めて思いました。
篠崎:根底にあるものは同じなんだと思います。アプローチは違っても、自分たちはもちろん、お客さまにもどうしたらワクワクしていただけるかを考えている。
今回の初となるカプセルコレクションは、生地選びから一緒に手がけた。「服づくりの楽しさを改めて感じることができた時間でした」と二人は口をそろえる
古屋:これからもロンハーマンには、私たちに刺激を与えてくれる存在でいてほしいです。皆さんの着こなしだったり、海外で感じてきた空気だったり、日々接するだけでも刺激になりますから。
篠崎:私たちも同じです。お互いに刺激し合える関係であり続けたい。10年後には両方のブランドに新しいメンバーも増えていると思います。でも、それぞれが大切にしていることはきっと引き継がれている。その先でまたどんなものが生まれるのか、楽しみです。
古屋:私はもともと前に出るタイプではなくて、デザイナーとして職人のように、見えないところでコツコツものをつくることが好きなんです。でも10周年を迎えて、ebureがどういうブランドなのか、商品だけではなく言葉でも、もっときちんと伝えていかなければと思うようになりました。10周年のテーマは「GIFT」です。これまで支えてくださったお客さまへの感謝はもちろん、これから初めてebureに出会う方にも、ブランドの楽しさをもっと伝えていきたいと思っています。
篠崎:今回、素材を並べながら一緒につくっていた時の、あのワクワクした感覚がお客さまにも伝わったらうれしいです。私自身、初めて買ったebureのコートを今でも着ています。今回のコレクションも、手に取ってくださった方のワードローブに長く残り、これから先のいろいろな時間を一緒に過ごしてもらえたらうれしいですね。
10年間という節目を迎えたebureとロンハーマン。次の章を築くべく、新しい10年に向けて歩みを続ける