国境を超えて、立場を超えて、年齢を超えて、人と人を結びつけ、誰かに愛を与える。服にはそのような力があることを、この格子柄の服たちは私たちに教えてくれます。
2020年、ロンハーマンは”FOUNDATION 1976”をスタートさせました。創業者のロン・ハーマンが大切にしている“Happiness is the Goal.(すべてはハピネスのために)”という思いを実現するために、私たちが社会に貢献できること、自然環境のためにできることを、さまざまな形で行動するプロジェクトです。その思いを“LOVE FOR TOMORROW”という言葉に託して、ロンハーマンを支えていただいている世界中の方々にメッセージを送りました。
プロジェクト名の由来となったカシミールの女性が手織りした格子柄のカシミア製大判ショール。
このショールを縫製してコレクションに生まれ変わる。こちらもオーダーを受け付ける
いち早く、メッセージにこたえてくれた一人が、ボニー・ヤングさんでした。ボニーさんはニューヨークで活躍するデザイナー。自身の名前を冠したブランド「BY.BONNIE YOUNG」は、繊細かつセンスあふれるエレガントなデザインが、現代を生きる女性たちに支持されています。そのボニーさんが、ロンハーマンとともに何かできることはないか、と提案してきたのが「Project Plaid」でした。
ボニーさんが、「Project Plaid」——「格子柄のプロジェクト」をスタートさせたのは、2020年11月のことでした。「インドに暮らす友人から相談を持ちかけられました。一緒に仕事をしていたカシミールの織物職人の女性たちがパンデミックで仕事がなくなってしまった。彼女たちが織ったカシミアをニューヨークで売ってもらえないかと。サンプルのショールを送ってもらったのですが、その美しいこと。自分のコレクションに使ってみたいと思いました。そうすれば、半年以上仕事がなかった女性たちのサポートができる。インドは本当にひどい状態で、仕事がなくなってしまった女性があふれていたんです」。
ボニー・ヤングさんらしいエレガントなデザインが格子柄を引き立てる。カシミアは手織りらしい上質な肌触り
当時はニューヨークもパンデミックで、経済、社会ともに大きな打撃を受けていました。多くのファッションデザイナーが活動を休止する中で、ボニーさんはカシミアを仕入れることにしました。「彼女たちが収入を得ることができますから。ですが、その時にコレクションをやることは、とても大変なことでした。世界の状況を見たら、とても正常とは思えない行為だったと思います。でも、何かしなければと思ったのです」。
コレクションのディテールには、デザイナーとしてのボニーさんのこだわりと遊び心が随所に見られる
ボニーさんは、同じく気がかりなことがありました。ニューヨークでもパンデミックで職を失い、ホームレスになる人が急増していたのです。特に増えていたのが、女性や子どもたち。「ニューヨークでも困っている人々を助けることにつなげたかったのです。カシミールの女性たちだけではなく、ニューヨークの女性たちもサポートをしたい。そこで、カシミールの女性たちがつくったカシミアの服が売れるごとに、ホームレスの女性と子どもへ、暖かい毛布を寄付する活動を始めたのです」
服を通して、人と人とをつなげ、必要な人に力を与える“Project Plaid”。ロンハーマンもこのプロジェクトを日本で展開することにしました。ロスをなくすために受注販売で、お客様が1着オーダーするごとに、1枚の毛布がニューヨークのホームレスの女性と子どもへ贈られるのです。
毛布はホームレスの女性と子どもを保護するシェルターを通して寄付をする。
「これまで70枚の毛布を寄付したので、70人の役に立ったのは確かです」
さて、ボニーさんから、サンプルの服が届いたのですが、その素敵なこと。カシミアは柔らかで肌触りもよく、手織りならではのぬくもりが伝わってきます。ディテールまでこだわり抜かれ、ボニーさんのこのプロジェクトにかける思いが感じられます。「格子柄のデザインを生かしながら、着心地の良い服を目指しました。私自身、この優美なスタイルがお気に入りで、一冬中このシャツとパンツを着ています」。2020年から、ボニーさんはコレクションで新たにつくられる生地を使用することをやめて、デッドストックやアップサイクルされたものだけを使うようになりました。このカシミアも廃棄処分になってしまう毛糸を織物にアップサイクルしたもの。
日本での「Project Plaid」の受注販売は、7月30日(土)~8月7日(日)ロンハーマン千駄ヶ谷店、8月11日(土)~14日(土)ロンハーマン大阪店にて
「私が考えている本当のビジョンは、このプロジェクトをもっともっと大きくしていくことです。ロンハーマンは単に服を見ているのではなく、その背後にあるデザイナーの魂を見て理解してくれています。今回、一緒に取り組めることを、とてもうれしく思っています。これは私にとって大切で思い入れの深いプロジェクトですから。世界中の女性の絆が、この織物のようにつながって織られていくのです」
ラルフローレン、ダナ キャランでキャリアを積み「BY.BONNIE YOUNG」をスタートさせたボニーさん。
長い経験と知識に基づきファッション業界の現状と問題を認識し、未来を見据える