ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。第7回目のゲストは「pillings」(ピリングス)のデザイナー村上亮太(むらかみりょうた)さん。2023年12月から、株式会社リトルリーグに仲間入りをしたpillings。株式会社リトルリーグ執行役員でもあるロンハーマン ウィメンズディレクター根岸由香里が、クロストークの相手を務めます。
「夢のパリコレ」そして次の舞台へ、大きな一歩を
「pillings」(ピリングス)創立以来、ファッションショーを欠かさない村上さん。2026年春夏シーズンのランウェイショー。
根岸:村上さんは、pillingsの想いを伝える方法として“ファッションショー”を選ばれたのはなぜですか。
村上:いい服をつくるのは当たり前のことだとは思うんです。ただ、プロダクトを売るだけではなくて、自分たちとしては、もっと創造性や心の豊かさを届けたいというのがまずあります。そうなると、ファッションショーというのが現段階だと一番適している発表方法だと考えています。
根岸: pillingsのショーは物語みたいで不思議な魅力があります。いつも、何かを訴えかけられている感覚を強く感じます。
村上:そんな風に見てもらえたら、とてもうれしく思います。ただ「格好いい」とかだけでなくて、自分がつくるものが誰かが何かを考えるきっかけになれたらいいな、と思っているので。
pillingsのニットは、日本の約100人ものハンドニッターによって支えられている。
ニット愛好家たちの熱意とものづくりへのこだわりが、温かみとやさしさを宿した一枚へと昇華させる。
この縮絨ジャケットもロンハーマン別注。10月25(土)~11月3日(月・祝)にはロンハーマン千駄ヶ谷店と京都店にてポップアップストアも開催する。
根岸:海外進出、そしてパリコレを目指しているんですよね。
村上:はい。「夢のパリコレ」といわれていますが、自分としてはそこで評価されてからがスタートだと思っています。ファッションの聖地でもあるパリでpillingsがどう評価されるか。パリでも認められるブランドになっていかなくてはと考えています。世界的な評価も含めてファッションの文脈において結果を残していきたいです。
根岸:そのポテンシャルは本当にあると思います。本人の前ですが、まだ親しくなる前から、村上さんにはすごい才能があるなと思っていました。私も審査員として参加しているFASHION PRIZE OF TOKYO 2022年のプロジェクト(※)に、村上さんが応募してきてくれて。※FASHION PRIZE OF TOKYOでは、日本のブランドにパリ・ファッションウィーク(パリコレ)でコレクションを発表する機会を支援している
村上:最終審査には残りました。
根岸:もう満場一致で、才能はピカイチ。全審査員が納得だったんですけど、パリへ行ってビジネスとショーをできるかの資金的な体力も審査対象なので。みんなで「残念だな」となって。それで株式会社リトルリーグの仲間になりませんか、と私からお声がけをして。村上さんはすべて一人でやっていて、正直、今のままでは才能があってもパリに出て行くまでの体力を付けるのは難しいのでは、という勝手なお節介でポンと声をかけて。
村上:その後のミーティングでは「本当に続けられますか」と、ずっと聞かれ続けましたね。「続けます」とただ言い続けましたが(笑)。
「mybasket」と題された26SSコレクションは、言語化されていない日本のワードローブにpillingsの解釈でクチュールが落とし込まれている。
「否定でも肯定でもない、当たり前の日常の中に感情や情緒をみつけることが大切」と考える村上さんは、
ファッション文脈で語られる日本のファッションに該当しない、まだ名前のついていない、日常服に着目した。
根岸:ロンハーマンでの取り扱いが決まった際、村上さんから見たロンハーマンのイメージと、pillingsとの親和性についてはどのように感じられましたか
村上:世の中にはロンハーマンにはハイなイメージがあると思います。pillingsはしっくりといかないと思っていました(笑)。
根岸:でも不思議なんですけど、とても通じるものがあるんですよ。「それって何だろう」と私も考えました。pillingsの持つ物語性やムードが、ロンハーマンが大切にしている「ライフスタイルをお届けする」ということにすごく親和性があるんです。ロンハーマンが日本に上陸して以来、16年間ずっと大事にしているのは、単にものをお売りするのではなくファッションを通じて幸せになってもらいたいという想い、そして、自分たちが素敵だと思うスタイルをお届けするということ。
村上:そこに共感して、pillingsを「いい」とおっしゃってくださっているんですね。根岸さんの「ライフスタイルをお届けする」という言葉通りに、ロンハーマンにはカフェやリビングの売り場があったりと、ちゃんと場をつくっている。服を売るだけではなくて、その空間自体を楽しんでもらおうとする姿勢に「共感する」といったら怒られるかもしれないですけど、その環境自体もデザインしているところは、すごく近い部分ではないのかなと。そして、ファッションを通じて何かを届けたいという「想い」の部分を大切にしているところは、一緒だなと思います。
服を愛してやまないという共通項を持つ二人だけあって話はやまない。「いつかクリスマスシーズンにはケーキをデザインしてみたいですね。
それと、子どもたちのバースデイパーティのプロデュースも。ライフスタイルを届けるロンハーマンだからできるおもしろさだと思います」。
村上さんのロンハーマンとのコラボレーションのアイデアに、「楽しそう」と根岸も笑みを浮かべる。
根岸:皆、服が大好きなんですよ。服のおもしろさやパワーに魅力を感じていたり、ファッションが誰かの何かの気持ちの後押しになったり、自信になったり、ワクワクになったりという部分を大切にしてきたから、pillingsはそういうものを一緒につくってくれるブランドだと思っています。ぜひ一緒に、これからもお客様に更なるワクワクを届けられたら嬉しいです。
村上:根岸さんがおっしゃった「届けたい」というのは、これからもすごく意識していかないといけないのかな、と思っています。「もうちょっと素材が良ければ着たい」とか、ロンハーマンの皆さんの視点がすごく大切だなと思っていて。そこはpillingsに足りていない部分で、今後、チャレンジしないといけないところだと思っています。参考にさせてもらう人や場所が身近にあるのは、すごくいいことです。
根岸:私たちはロンハーマンの視点で、お客さまにpillingsを提案していく、ということを大事にやっていきたいですね。今までpillingsを知らなかった方にもその魅力を届けたいです。そして、pillingsの良さをきちんと伝えられるようなお店でありたいと思います。本日はありがとうございました。
Pillingsは株式会社リトルリーグに仲間入りしたことで、新たなステージへ踏み出す。「お互いにとって刺激と豊かさをもたらすと思います」と、村上さん、根岸ともに期待をする。
Profile
村上亮太 Ryota Murakami
1988年生まれ、兵庫県出身。2020年に前身ブランド「RYOTAMURAKAMI」(リョウタムラカミ)から「pillings」(ピリングス)に改名し新たな活動を開始。全国のハンドニッターとともに、一点一点手編みで仕上げるニットを制作。手仕事の温もりとつくり手の思いを大切に、服を通じて背景にあるストーリーを届ける。