雄大な空の下、「ロンハーマン匝瑳(そうさ)店」の有機畑に立つと、何かが少し変わったことに気づきます。ソーラーパネルの下では、土の表情がやわらぎ、作物が以前よりもたくましく育っています。あの日、初めてこの場所に足を運んでから、私たちは確かに時間を重ねてきました。2021年に1号機が通電してから、千葉県匝瑳市の営農型太陽光発電「ソーラーシェアリング」は5号機まで増えました。

2021年、千葉県匝瑳(そうさ)市で「ソーラーシェアリング」を手がける「市民エネルギーちば」の皆さんの手を借りて、「ロンハーマン匝瑳(そうさ)店」のプロジェクトがスタートした
数が増えただけではありません。発電も、畑も、そしてロンハーマンのかかわり方も、少しずつ進化しています。1号機では発電能力が1枚70Wのリユースパネルを用いました。「まずは、できることから」。その選択は、今振り返っても私たちらしい一歩だったと思います。2号機、3-4号機と増やすごとに、パネルの発電能力は135W、145Wと増えて、5号機では165Wになりました。パネルの進化によって、太陽の光を上からだけではなくて下からも受け止めることができるようになりました。5号機では、初めてつや消しブラックのアルミ架台を導入しました。これまでの架台に比べて周囲の風景に溶け込んでいます。発電もまた、自然への敬意からデザインするものだと改めて教えられました。

ロンハーマンのスタッフも1号機のソーラーパネルの設置を手伝った。みんなの思いをパネルに寄せ書きした
畑の風景も変わっています。1〜3号機では、私たちが目指していた畑を耕さずに作物を栽培する不耕起栽培が定着しました。土壌は年々力を取り戻しています。不耕起栽培は、土壌の自然な構造や生態系を保ち、微生物を活性化させて土地が持つ生産力を高めることができます。炭素を地中に閉じ込めることができるので、地球再生にもつながるとして世界中から注目を集めています。1号機は最も安定した収量を誇り、昨年は大豆を約150キロ収穫することができました。2号機では、雑草の強さに悩まされながらも、緑肥(りょくひ)を重ねることで土はふかふかに。緑肥は育てた植物を収穫せずにそのまま土壌にする「生きた肥料」といわれるものです。時間をかけて土と向き合うことの大切さを、畑は教えてくれます。3号機の土壌も安定してきました。4号機と5号機はまだまだ課題がたくさんあります。それでも、毎年少しずつ土地を知り、次の一手を考える。その積み重ねが、未来の畑をつくっていきます。

ソーラーシェアリングの発電施設前には、ロンハーマンの看板が設置されている。B1は「SUSTAINABLE EARTH、1Fは「ORGANIC FARMING」、2Fは「SOLAR POWER」、

ソーラーパネルの下の有機畑で収穫された大豆。年々、土壌も豊かになり収穫量は増している
土壌の改善に効果的なのが、大豆と大麦を交互に育てる輪作です。深く根を張る大麦と比較的浅く広く根を張る大豆。この2つの作物を繰り返し育てることで、土地は本来持つ力を取り戻していきます。こうして育った大麦が思いがけない形で実を結びました。2025年夏、私たちはこの畑で採れた大麦からつくったクラフトビールを、日頃、ものづくりでお世話になっている取引先の皆さまへお送りしました。ラベルに記したのは“Love for Tomorrow”。 そう、私たちがよりよい未来をつくると誓った言葉です。トロピカルで軽やかな味わいのそのビールに、感謝の手紙と私たちの「現在地」と「これから」を伝えるメッセージをそえました。私たちはつくる服による環境への負担を少しでも減らそうと挑戦しています。それには取引先の皆さまの協力がなくてはならないもの。私たちの小さな、でも確かな歩みを数字だけでなく、体温のある形で届けたかったのです。

2023年、お客さまにロンハーマンの取り組みを理解していただくため、ツアーを開催

ツアーでは「市民エネルギーちば」代表の東光弘さんにソーラーシェアリングについて解説していただいた。皆さんの真剣な眼差しに東さんの言葉にも熱がこもった
振り返れば、2年前に行った匝瑳ツアーで見ていただいた景色と、今の匝瑳は少し違っています。だからこそ、また違った形でソーラーシェアリングを体験していただける機会をつくりたい。畑で育った作物はビールだけでなく、別の形でも届けたい。地域の方々ともっとつながる場を増やしていきたい。そしていつか、この土地で育てたコットンから、洋服をつくることができたなら——。

完成したばかりの5号機。最新式のパネルで発電量も増加した。つや消しのブラックの架台は自然の風景になじむ

2024年、千駄ヶ谷店ではロンハーマン日本上陸15周年のパーティで、参加者の方に匝瑳の恵みが形になったビールを味わっていただいた。2026年3月に15周年を迎える神戸店のお祝いの日にも、皆さまと分かち合う予定
太陽の光と土の力、そして人への想いを分かち合いながら、私たちは今日も匝瑳でエネルギーと作物を育てています。夢はたくさんあります。そのゴールは、まだ遠くにあるかもしれませんが、道のりをともに歩いてくれる人がいることが、何よりの希望です。
ロンハーマン匝瑳店は、これからも進化を続けます。
静かに、誠実に、そして確かに。

2025年、冬にまいた大麦の種から小さな命が芽吹いた。私たちやお客さま、「市民エネルギーちば」、みんなの想いとともに育っていくことだろう