ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。
第１回目のゲストはHERILLのデザイナー大島裕幸さん。ホストはウィメンズディレクター根岸由香里です。
おばあちゃんの服づくりを受け継ぎ、今に
根岸：洋服が好きになったきっかけはありますか？
大島：服をつくるのが好きだった祖母の影響ですかね。おばあちゃん子だったので、小学校に上がるまで、ミシンの近くにずっといました。小学生になったら、もう服が好きすぎて、祖母にリクエストして「西城秀樹が着ていた服をつくってほしい」と。未だに写真がありますが、胸に三角のポケットが付いているという（笑）
根岸：それはかわいい小学生ですね。
大島：中学校から、今とやっていることが全く変わらず、服を脱いだり着たりの繰り返しで、夏でも冬物を着てみたりとか。実家は香川県のめちゃくちゃ田舎なんですが、アルバイトをしたお金で、夜行バス乗って大阪まで行って、流行っているものを探したり。
根岸：ずっとデザイナーになりたいと思っていたんですか？
大島：夢はファッションデザイナーというのはありましたけど、今の仕事がデザイナーとは思っていません。ファッションデザイナーの世界は見た目が華やか。私は華やかさの欠片もないので。もっと地味に糸を作ったりとかゴチャゴチャしているのが好きなんですよ。
根岸：洋服好きだったら、スタイリストとか、お店をやるとかもあったと思うんですけど、洋服をつくりたかった。
大島：はい、つくるのが好きなんですよね。高校生の時から、制服を改造していたりしていたので。襟を取ってみるとか、ポケットを１個付けてみるとか、部活をやっていたんですけど、ジーパン屋でアルバイトもしていて。接客よりも、縫う方をやっていました。
一見はベーシックなデザインながら、「服のプロ中のプロ」をうならせる。大島さん曰く、「誰にでも似合うようにはしていない。わかる人にはわかってもらえれば」
根岸：何部だったんですか？
大島：空手部です。小学生の時は全国3位だったんですよ。国体、インターハイ、全部出ていて、県の強化選手でした。
根岸：ええ!?
大島：だから、何かすごく男世界が嫌で、華やかな世界に行きたかったんでしょうね、きっと。
根岸：デザイナーとして、ものをつくる人間として、大事にしていることを教えてください。
大島：やはり、「いい」ですね。単純にいい素材、いいパターン、いい縫製をただただ追求したい。それだけかもしれないですね。
根岸：とても、シンプルですね。ちなみに、いっぱいあるかもしれないですけど、「お気に入りの一着」と聞かれたら、何かパッと出るものありますか？
大島：難しいですよね。いっぱい好きですが、やはり古着のカシミアのコートとか昔のカシミアのニットとかは捨てられないですね。
根岸：やはりHeritageなんですね。
大島：自宅の壁一面に棚をつくって、そこにカシミアの古着を全部突っ込んで置いているんで「カシミアの棚」みたいになっていて。深夜、家に帰ってお酒を飲みながら、服を脱いだり着たり……。
根岸：それって学生の時は私もやっていたんですけど、さすがに大人になってまでは（笑）。本当に洋服が大好きなんですね。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
「今回、対談をさせてもらって、なんでHERILLにこんなに魅力を感じるかがわかりました」（根岸）
AFTER CROSS TALK
大島さんとは、以前から展示会とか商談の時に、いろんなお話を聞いていたんですが、ますます魅力が深まりました。ブランドに対してもですが、大島さんに対しても。すごくいいお話が聞けたと思います。沢山のブランドを売っていて、ものすごい数のブランドをバイイングして見てきている中で、自分自身が「お金を出して買う」とか「夢中になる」ブランドって、そんなに多くはありません。でも、近年の中で、本当に私自身がすごくほれ込んでいるんですよ、HERILLに。今日は、「なるほどな」とその理由がわかりました。――根岸由香里
profile
大島裕幸 Hiroyuki Oshima
HERILLデザイナー。文化服装学院卒業後、デザイナーズブランド、某大手セレクトショップの企画を経験でキャリアを積む。2019年秋冬から、ユニセックスブランド「HERILL」（ヘリル）を立ち上げる
根岸由香里 Yukari Negishi
Ron Herman事業部事業部長兼ウィメンズディレクター。文化服装学院卒業後、セレクトショップで販売、企画、バイイングを担当。2008年、ロンハーマン立ち上げ時にサザビーリーグへ。2016年から現職
