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CROSS TALK02  HOMME girls Thakoon Panichgul 【前編】

CROSS TALK02  HOMME girls Thakoon Panichgul 【前編】

Ron Herman Journal

Issue 15Posted on Feb 26.2021

ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。第2回目のゲストはThakoon Panichgul(タクーン・パニクガル)さん。世界的に活躍するデザイナー、パニクガルさんが、新たに挑戦したのは、メンズシルエットをそのままレディースのウエアに落とし込んだHOMME girls(オム ガールズ)。今シーズン日本に初上陸する注目のブランドですが、その新鋭的なデザインに込めるパニクガルさんの思いをお聞きしました。

「どの女の子(girl)にも少年がいて、どの女性の中にも男性(homme)がいる」と語るパニクガルさん。男性のような服を着ることは女性らしさを隠すものではない。むしろ、女性らしさに火をつける


—デザイナーになる前は雑誌の編集をしていたそうですが、ユニークなキャリアですね。


はい。ファッション雑誌『ハーパース・バザー』のエディターとライターをしていました。私は本当に雑誌が大好きなのです。だからデザイナーになってからも、ファッション雑誌が気になって仕方がない。ご存知のように、世の中にはとても多くのファッション雑誌が存在します。でも、私が求めている雑誌はなかった。


—どんな雑誌を求めていたのですか。


ファッション業界で仕事をするようになって、多くの女性に出会いましたが、実はその中には好んでメンズの服を着る人たちがいることに気付きました。これはとても興味深いことで、それまでそのような私が敬愛する女性たちが好むスタイルを掲載する雑誌は存在しなかったのです。きっと多くはないかもしれないけれど、絶対に好きな人たちがいるに違いないと考え、HOMME girlsを1年半前にスタートしました。まずはインスタグラムに写真をアップすることから始めたら、あっという間に話題になりました。SNSってすごいと思うのです。自分がやりたい、と思ったことをすぐに実現できて、とても早く広がって、大きなエネルギーに変わっていきます。インスタグラムを通して、カメラマン、スタイリスト、ライターともつながっていき、まるでネット上で編集会議をしているようでした。


—デジタルの世界からリアルな雑誌につながった。


今はデジタルの時代ですが、私は何かに触れることが大切だと考えています。だから雑誌という紙媒体を選んだのです。自分自身も雑誌のページをめくることで、いいアイデアが浮かんだり、刺激を与えられてきました。ですから、目で見るだけで、早いスピードでどんどん情報が流れていってしまうデジタルではなく、1ページずつ手でめくっていくことでひらめきを感じてほしいと思いました。その方が読者により強い影響力を与えられると信じています。

メンズのシルエットはそのまま。若干、肩幅をリサイズしているだけでパターンは同じ


—そして、さらに雑誌から服が誕生する。とても、おもしろいストーリーですね!


私はデザイナーですが、同時にクリエイターです。デザイナーはデザインだけをしていなければならない、雑誌を作ってはいけないというルールはありません。ソーシャルメディアの普及やデジタル社会の進歩によって、ファッション業界では様々な境界があいまいになってきています。私にとって雑誌を出すことは、ファッションへの新しいアプローチの方法なのです。私は美しい写真をみんなに見てもらいたい、その記事を読んでもらいたいということで、雑誌というアイデアにたどり着いたというのが正直なところです。そのために、まずは一枚シャツを作りました。これは自分にとって初めは実験に過ぎなかったのです。しかし一枚作ってみたらとても評判が良く、もっと作ってほしいと求められました。これがコレクションの始まりです。


—メンズのシルエットをそのままにレディースのウエアに落とし込む。とても、刺激的なコンセプトです。


ずっと長い間、いったい誰が女性の服のルールを決めたのだろうか、という疑問を抱いていました。女性が自分自身のためにこういう服を着なければ、と決めたのか? それとも男性が決めたルールに従って着ているのか? 実は男性と女性は似ている部分がたくさんあります。男性は自らの行動のために必要な装いをします。さっそうとしていて実用的な格好です。Homme(男性的なもの)はすべての女性の中にも存在すると思います。メンズの服を着る女性は、そのことでより一層自分自身を表現できるのです。ただ身体を被うために着るのではなく、彼女たち自身の心のために着ているからです。私はもし女性らしさを表現したいと思っているならば、女性の体形を強調して女性らしさを表現するよりも、体形を強調しないメンズの服を着ることで逆に女性らしさを表現できると考えています。このことを端的に表現するならば、A State of Mind (内面)。服で表現するものが、表面的なものではなく、内面をも表現するのだと思います。これはつまり女性的なものと男性的なものとの融合なのです。


—HOMME girlsを発表して、反応はいかがでしたか。


とても、熱狂的でした。あっという間にそのエネルギーは世界中に広がって、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オーストラリアとあらゆる国から情熱や興奮が伝わってきました。あるドイツ人の女性は、「Homme Girl! これこそ私が待ち望んでいた私自身のスタイルの呼び方だわ!」と、とても喜んでくれました。彼女はメンズのスタイルを取り入れていたのですが、今までどうやってそれを人に伝えればよいかわからなかったそうです。すごくうれしいことですが、メンズのスタイルを着る女性たちがハッシュタグでHomme Girlsと入れてくれるようになりました。HOMME girls のアイデアのエネルギーは新しいものではなく、常に私達の周りに存在していたものでした。そして、それは年齢を超えて、すべての女性が理解できる何かであると思います。


ソックス以外、イタリア製のハイクオリティな生地を使用。リラックス感あふれる着心地のよさも楽しめる


—メンズウエアのシルエットを女性がうまく着こなすようにデザインするのは難しかったのでは。


そんなことはありません。知り合いのたくさんの女性と話して、彼女たちがメンズの服を着る時に、そのままのデザインを望んでいることがわかりました。つまり、女性の体形に合わせてシルエットを変更する必要はないのです。肩幅だけを少し小さくしてほしいというくらいでしたね。だから、パターンはそのままで、ほんの少しだけ、女性のサイズに変更しただけです。


—具体的なイメージはあったのですか。


1990年代のニューヨークのHomme Girlsをイメージしてデザインしました。Tシャツにジーンズをベースにしようと思いました。Hommeという響きはシックでちょっとラグジュアリー感があります。ですから、カジュアルとシックを融合させた、フーディとシックなデザインのジャケットとの組み合わせなど、つまりストリートウエアとテイラーとを合わせるイメージです。私は90年代が大好きなのです。実際、Homme Girl 、Homme Boyと言う言葉は90年代に出現しました。女性R&BグループのTLCは、まさしく当時のHomme Girlsの象徴です。
<後編につづく>


Profile
タクーン・パニクガル Thakoon Panichgul
「THAKOON」デザイナー。タイ出身。11歳で渡米し、ネブラスカ州で育つ。ボストン大学卒業後、大手アパレルメーカー、出版社でキャリアを重ねる。美大でアートとデザインを専攻後、デザイナーに転身。コレクションはミシェル・オバマ大統領婦人のお気に入りになるなど、世界的に注目される。2019年、「HOMME girls」をスタートさせた



タイ出身のパニクガルさん。母親も祖母もプロフェッショナルな裁縫家だった。ファッションへの情熱は、脈々と引き継がれてきたものだ

 

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