Journal

-Meets Your Artist- Danny Fuller

-Meets Your Artist- Danny Fuller

Ron Herman Journal

Issue 111Posted on Aug 08.2025

夏の日差しにきらめく湘南の海。水平線に浮かぶ白い雲とヨット。潮風に葉を揺らす椰子の並木……。ロンハーマン逗子店の奥に歩みを進めていくと、白壁の一面に、彩り鮮やかな花々が咲き誇っています。世界的なサーファーそしてフォトグラファーとしても知られるDanny Fuller(ダニー・フラー)さんの写真展が、現在、逗子店にて開催されています。そのタイトル名は「WILD FLOWERS」(野に咲く花々)。ダニーさんはどんなアーティストなのでしょうか。



ロンハーマン 逗子マリーナ店で開催されているDanny Fuller(ダニー・フラー)さんの写真展「WILD FLOWERS」。太陽の日差しにあふれる明るい店内に、60枚もの彩り豊かな花々の写真が飾られている


——まずは、今回の個展についてお話をうかがえますか。美しい色彩は見ているだけで、ハッピーになれます。

 

私たち一人ひとり、そしてアーティストとして、自分の周りにある美しさに目を向け、スローダウンすることが大切だと感じている。毎年春になると、南カリフォルニアには「スーパーブルーム」と呼ばれる奇跡が訪れるんだ。雨の多かった冬の後、パシフィック・コースト・ハイウェイ沿いに野生の花々が咲き誇る。何日もクルマで通り過ぎていると、「もっと深く見てみたい」という気持ちが芽生えて、まるで絵画のような色彩の世界にひかれて、目には見えない何かを捉えたいと思うようになったんだ。

 

——今回の「WILD FLOWERS」をはじめ、ダニーさんの作品は色彩豊かで絵画的・抽象的な印象があります。写真撮影で特別な技法を使っているんですか。

 

自然に存在する色のパレットを最大限に生かしつつ、動きや生命力の本質を「見る者」 に伝えることを目指している。見えないもの、まだ明らかになっていないエネルギーを可視化することに関心がある。特に自然の中にあるそうしたエネルギーをね。




サーファーのダニーさんは、海をテーマにして撮影をすることが多いが、さまざまな生命にレンズを向ける。「確かに僕にとって海はホームのような存在であり、アーティストとしてもサーファーとしても切っても切れない関係だ。でも、時を重ねるうちに、自然という存在に強く引き寄せられ、そこにもっとも自分らしさや命の実感を覚えることに気づいたんだ」と、ダニーさん


——写真を撮り始めたきっかけは。撮影の際にもっとも大切にしていることは何ですか。

 

写真との出会いは高校時代で、ごく初歩的なレベルだった。でも、サーファーとして世界を旅するようになって、自分が被写体となって、数多くのフォトグラファーたちに囲まれるうちに、彼らは僕にとっての師となり、「写真とは“光で絵を描く”こと」という本質を教えてくれた。撮影でもっとも大切にしているのは、「時間をかけて自分の周囲と一体になること」。写真を撮ることは、僕にとって旅そのものであり、自然という“純粋な源”とのつながりを深める機会でもあるんだ。

 

——撮影のインスピレーションは、どこから得ていますか。

 

常に、自分の“次なる呼びかけ”がどこからくるのかを探し続けている。何かに心を動かされる瞬間があれば、それが本当に意味や深みのあるものかどうかを追求せずにはいられない。すべては“今この瞬間”における、個人的な体験だからね。

 

 

 世界屈指のトップサーファーであるダニーさん。極限られたサーファーにしかチャレンジできないビッグーウェーブに挑む

 

 

——自然ともっとも一体になれるのは、サーフィン中ですか。それとも写真撮影中ですか。

 

写真撮影は、自然とともに静かに過ごす瞑想のような時間だね。観察して深く向き合うもの。一方、サーフィンは、自然の力とともにダンスするようなもので、波との瞬間的な対話なんだ。「今ここ」に集中し、信頼し、流れに身を任せる必要がある。波に乗るという行為には、他では味わえない生の躍動感があるんだ。自然を“体験する”のではなく、“自然の一部になる”という感覚だね。

 

——ダニーさんのライフスタイルについて、教えてください。

 

ロサンゼルスを拠点にして、もう20年になる。この街は文化が豊かで、創造的な人々にあふれていて、いつも刺激を受けている。ローカルなサーフシーンとも密接につながっていて、ロサンゼルス中のさまざまな人々が交わるその感じが、とても好きなんだ。普段は、サーフィンが大好きな二人の子どもたちと過ごす時間が多く、海への愛や知識を分かち合えることを、心から幸せに思っている。

 

 

 

「写真は、自分が世界をどう見て、どう存在しているかを表す、とても個人的なもの。移ろいゆく瞬間を結晶化してきた旅と経験そのもの」


——サーファーとして世界中を飛び回っていますが、写真を撮る時間はどうつくっているんですか。

 

旅するサーファーであることは、恵まれたことだと思う。世界中の文化や美に触れる機会に恵まれてきたことで、写真は常に僕の旅の一部であり、経験や驚きを記録するツールとなってきた。

 

——ダニーさんはビッグウェーブサーファーとして知られています。ハワイのパイプライン、ピアヒ(ジョーズ)、タヒチのチョープーといったひと握りのトップサーファーしか挑まない波にも乗ってきました。

 

あのような波に挑むとき、まさに「生きている」と実感できる。その感覚は言葉では言い表せないよ。サーファーにしかわからない感覚だと思う。年月を経て気づいたのは、サーフィンが僕の創作活動に与えていた影響は、単なるサーフィンにとどまらず、海との関係そのものにあったということだ。海という生命力に常に引き寄せられ、僕はそこでもっとも“自分らしく”いられる。




「WILD FLOWERS」は9月15日(月)まで開催している。作品は限定販売していて購入も可能。「このような個人的な作品をロンハーマンを通じて発表できることを、とても光栄に、そして感謝しています」

—— これまで、日本に来たことはありますか。

 

はい、何度も訪れる機会があった。日本は地球上でも特に好きな場所の一つだね。訪れるたびに、世界レベルのサーフィンを追い求めつつ、素晴らしく多様で刺激的なアートシーンにも浸ってきた。最終的には、日本の文化と人々への深い愛が、僕を何度もこの国に引き寄せているのだと思う。

 

—— 最後に、ロンハーマンのお客様へのメッセージをお願いできますか。

 

この作品を皆さんと共有できることを心から光栄に思う。人生という旅のなかで、いつか皆さんとどこかで出会えることを願っているよ。

Latest Issue

Back to Index