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-Meet Your Artists- Koji Toyoda

-Meet Your Artists- Koji Toyoda

Ron Herman Journal

Issue 05Posted on Oct 15.2020

アートは見る人の心を揺り動かし、時に日々の生活に新しい光を差し込ませてくれます。「ファッションとは愛にあふれ、刺激的で楽しく、自由であるべきだ」とは創業者ロン・ハーマンの言葉ですが、この「ファッション」というワードは「アート」に置き換えることができるでしょう。ファッションとアートと形は違いますが、その先にあるのはみんなの「スマイル」そして「幸せ」ではないでしょうか。

そのような思いから、ロンハーマンは、これまで同じフィロソフィーを共有する国内外のアーティストの皆さんとともに、アート展を開催してきました。中でももっとも多くの作品を展示してきたのが、今回、紹介する豊田弘治さんです。大阪の郊外にあるアトリエを訪ねてみましょう。


大阪郊外の倉庫街にある豊田弘治さんのアトリエ。「この一画はコスタメサ(南カリフォルニアのサーフボード・ファクトリーが多いエリア)のような雰囲気がしていいです」と豊田さん

大きな窓から太陽の輝きが差し込む、広々とした空間。倉庫をリノベーションした室内には、絵具、サーフボードにウエットスーツ 、レコードや写真集などが雑多ながらも整然と並んでいます。壁にかけられたキャンバスからは、満面の笑みを浮かべたサーファーが、私たちを迎えてくれます。

豊田さんの作品といえば、このスマイルなサーファーでしょう。パステルカラーに彩られた明るい背景の中で、線画で描かれたサーファーが笑っています。純粋にサーフィンの楽しさを享受している姿をとてもシンプルに表現。これまで数多くの豊田さんの作品に登場してきたファンの方にはお馴染みのモチーフです。

「小学校2年生の時から描いてるんです。『これ何なん?』と聞かれたら言うんですけど、『地球人』なんです。性別もないし肌も透き通って色はない」と笑う豊田さん。サーファーには国籍も人種も関係ない。海の上ではみんなが自然と笑顔になる……。観ていると、不思議と心もあたたまり、元気がふわりとわいてきます。


豊田さんの作品展「上を向いて」は、神戸店で2020年11月13日(金)まで開催中。「自分もできるだけお店に行かしてもらって、お客さんと話をしたいですね」

ものごころついたころから、絵を描くのが好きだった豊田さん。アーティストになる夢を叶えるために、若くしてニューヨークへ渡りましたが挫折。以後、地元の大阪でグラフィックデザイナーとして活動してきました。しかし、30才の誕生日に運命を迎えます。

「『もう、30やなぁ……。俺、こんなんでええんかな』と思って。何の苦労もなく、そんなお金持ちでないですけど、サーフィンもして楽しく生活していたんです。けど、『ほんまにこれでええんかな……』と。30才まで生きて来た中で、子どもの時から続けてること、それが『表現すること』と『サーフィン』やったんですね。その二つを合わして何かやってみよかな、って思ったんです。それで、ちょうど風呂から上がって、コーラを飲んでたら『Enjoy Coke』と書いてあったから、『これ、『Enjoy Surf』やな』と、すぐに描いて」

その時に生まれたのが、今でも豊田さんのトレードマークとなっている「Enjoy Surf」のロゴ。その日から、サーフィンとアートを結びつけた制作活動が始まりました。今でこそ「サーフアート」は馴染みがありますが、1990年代は本場のカリフォルニアでも珍しい存在でした。いろいろなギャラリーに出展をオファーしても断られ続け、1997年、ようやくハンティントンのミュージアムで初展示を成功させました。サーフアーティスト豊田さんの誕生です。


いつもほがらかな豊田さん。「そこらへんの大阪のおっちゃんです」と笑うが、作品に登場するサーファーの「地球人」とどこか重なる

今シーズン、ロンハーマンは豊田さんのアート展を千駄ヶ谷店で催しました。そのテーマは「上を向いて」。そこにはコロナ禍に見舞われている世界に対して、サーフアーティストとしてのメッセージが込められています。

「もう、あまりにもしんどかったでしょ。ずっと何にもできなくて、もんもんとしてきて。結局、自分に言ってるんですよ。『上、向けよ』って。誰でも一緒だろうから、みんなも多分、上を向いた方がええやろうなって。普通は『前向けよ』でしょうけど、前やと、ちょっとちゃうよな、と。上向いてたら、気持ちええでしょ。海でも、波待ちしてて、空とか見てたら、気持ちええじゃないですか」

子どものころからアーティストになるのが夢だった豊田さん。若いころに挫折をしたものの、今はキャンバスを通して人々に「喜び」を届けている

コロナという病魔に対しては、国も人種も関係ない。「地球人」として、みんなで上を向こうという豊田さんの思いです。
「やっぱり家族でおる時間が多かったんで、『家族』という感じを出したかったんです。まあ、こんなん言うのも照れくさいんですけど、『家族愛』を抽象的やけど表現したかったというのはあります」

次の作品展に向けて、キャンバスに向い絵筆を走らせる豊田さん。
「正直言うて、何で自分が絵を描いてるかは、全然さっぱりわからないです。ただ、今はもう完全に自分のエゴイズムじゃなくて、人に『喜んでもらえる』というのが大前提です。やっぱり、そこが美術家の人とはちょっと違うと思うんですよ」

また、ここから新しい「スマイル」、そして「幸せ」が生まれていきます。


15才で出合ったサーフィンは人生にとって欠かせないもの。クリエイティブなインスピレーションは海の上で生まれる



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