「温故知新」——古いものや伝統を学ぶことで、新しいものを生み出す。日本古来より大切にされている教えですが、この哲学をファッションの世界で実践しているのが、「visvim」(ビズビム)です。日本で培われてきたクラフトマンシップと素材に向き合い、現代の服で表現するために新たな技法に挑戦しています。藍染、泥染、ししゅう、手縫い、かすり……。伝統的な服づくりを現代的なデザインに昇華させて、日本から海外に発信する。その独自の姿勢が、国内はもとより世界でも大きな注目を集めています。
8月24日(土)から29日(木)まで、ロンハーマン千駄ヶ谷店で「visvim」「WMV」 (ビズビム / ダブリューエムブイ)の展示イベントを開催。今回のコンセプトは、
日本古来より大切にされてきた絹の一種、「真綿」(まわた)
表面にウールとシルクを使用し、天然繊維のみで高密度に織り上げたアーミーツイル製リバーシブルジャケット「THORSON JKT(MAWATA)」。裏面にはシルクで織り上げたツイル生地を使用。詰め物に真綿を使用
「その土地の自然を利用した有機的な技法が生み出す独特のムラや風合いに、人間らしさや個性的な魅力にこころひかれます。長い歴史の中で育まれてきた技術とそれを受け継ぐ職人の方々が、日本にはまだ残っている。ただ文化として保存するのではなく、現代のライフスタイルに合ったプロダクトとして、未来へ長く使い続けていけるものを生み出したい」。visvimのクリエイティブディレクター中村ヒロキさんの言葉です。visvimが手がけるアイテムには、感度の高いデザインはもちろんのこと、その質感や風合いに心が揺れ動かされます。まさに中村さんの「心ひかれるもの」が服に宿っているのでしょう。
真綿は、その名前から「綿」の一つだと思われることが多いが絹の一種。上質な「生糸」(きいと)と見なされない絹を庶民が愛用してきた、日本人には古くからなじみのある素材だ
繭(まゆ)を煮てから繊維を広げ薄く延ばすことで、ふんわりとした柔らかい質感になる。ほぼすべて手作業のため根気がいる仕事だ
ロンハーマンでは2023年に引き続いて、今シーズンもvisvimの展示イベントを開催します。前回のテーマは「天然染」、さて今回は……。「真綿」(まわた)です。耳にすることがある素材ですが、その正体を知っている方は少ないのでは。「日本には古くから蚕(かいこ)の繭(まゆ)を綿状にして、衣類や寝具の中綿として使ってきた文化があります。木綿の『綿』に対して、貴重な繭(シルク)を素材とすることから『真綿』と呼ばれ重宝されてきました。自分が収集してきた江戸時代の冬用の着物や羽織、夜着などにも真綿が使われていることに気づいたことをきっかけに、コレクションでも取り入れるようになったのが7、8年前のこと。実際に商品に使用してみると、保温性、透湿性にすぐれているだけでなく、服になった時にしなやかなドレープ感を生むことを知り強くひかれました。こうした伝統的に使われてきた素材のすばらしさを、現代の洋服でも表現したいと考えています」と中村さん。
表地にシルクで織り上げたシャンタン生地、裏地はシルクで織り上げたサテン生地を使用したオールシルクのシャツジャケット「KEESEY JKT(MAWATA)」。詰め物は真綿を使用。オリジナルの水牛ボタンがデザインのアクセントに
今回お目見えするのは、リバーシブルジャケットとシャツジャケット。どれも中村さんのセンスがあふれるモダンなデザインながら、手に取ると真綿ならではの自然のやさしさと職人技のぬくもりが伝わってきます。真綿の生産地は福島県保原町(ほばらまち)、現在の伊達市。この地では奈良・平安時代より養蚕業か栄えていたといわれ、農家の女性が兼業として真綿の手引きを行なっていました。一粒の繭をぬるま湯に浸して広げ、袋状にする作業は朝から晩まで行われていました。
繊維として機能特性が高いだけでなく、天然素材のため肌にやさしく着心地も良い真綿。現在ではその希少性と価値が増している
「使われている生地や仕事の跡から、私たちのものづくりに対する『真摯な姿勢』を感じていただけると思っています。結局、いつの時代も、人の心を動かすのは人の心です。ものづくりへの姿勢を通じて、尊厳を持って『自分らしさを大切に生きる』というコンセプトを少しでも広められたら」。ロンハーマンも大切にしているのは「人の心」。この展示イベントを通して、お客さまともその思いを共有できたら、うれしい限りです。
真綿の詰め物を使用したオールシルクのリバーシブルジャケット「SOUVENIR JKT (MAWATA)」。今回紹介したvisvim/WMVの3モデルは展示イベント後に受注販売される
INFORMATION
Product Introspection: Mawata Silk
8.24(sat)-8.29(thu) 11:00-19:30
At Ron Herman Sendagaya
※インスタレーション期間中の受注オーダーは承っておりません。
visvim for Ron Herman
15th Anniversary Exclusive / Mawata Collection Order Event
8.31(sat)-9.1(sun) 11:00-19:30
At Ron Herman Sendagaya
※詳しい詳細は26日(月)より、HPにてお知らせいたします。