Journal

SOSA, 2022

SOSA, 2022

Ron Herman Journal

Issue 58Posted on Dec 31.2022

雲一つない冬の青空。朝の清らかな空気の中、太陽の光がソーラーパネルに降り注ぎ鏡のように輝いています。パネルの下には、大豆の畑が一面に。さやを割ると、真珠のように艶やかな大豆が顔をのぞかせます。今日は2022年、最後の収穫。畑の実りとともに「ロンハーマン匝瑳店」の一年が過ぎようとしています。



昨年、ロンハーマン初の「ソーラーシェアリング」を試みて、2021年10月15日に通電。匝瑳のコミュニティと「市民エネルギーちば」、さまざまな思いが一つとなって「ロンハーマン匝瑳店」が生まれた


「なぜ、ロンハーマンが太陽光発電に取り組むの?」。昨年、私たちが千葉県北東部の匝瑳市で「ソーラーシェアリング」の施設を手がけ、「ロンハーマン匝瑳店」と名付けてスタートした際に、多くの方から質問をいただきました。ですが、「ソーラーシェアリング」とは何かを説明すると、「すごくいいこと。とてもロンハーマンらしい。ぜひ続けていって」と皆さんから応援の声をいただきました。



1号機と2号機のソーラーパネルの下に広がる大豆畑。枯れてしまっているようにも見えるが、さやの中の豆は秋冬の気温の低下とともに成熟し旨味を増していく。あえて土を耕さない「不耕起栽培」により大気へのCO2放出を低減。痩せた土地に適した大豆と麦を輪作することで、土壌は豊かに育っていく


“Love for Tomorrow” 私たちは、より良い未来に向けて本質的なサステナビリティに取り組むことを目指しています。その一つが、2030年までにロンハーマン内でカーボンニュートラルを実現すること。達成のために、全国のストアで使用する電気を再生可能エネルギーに変えることをまず目標としました。その手段を見出している時に出会ったのが、「市民エネルギーちば」が運営する「ソーラーシェアリング」でした。



地元の農家の協力によって大豆を収穫。コンバインにより作業量や時間は低減されたが、細かい作業には人の手が必須


「ソーラーシェアリング」が生み出すのは、電気だけではありません。コミュニティや環境、社会にも、大きな恵みをもたらします。休耕地や荒地など眠っていた土地を有効活用して、ソーラーパネルを設置。パネルの下の敷地で有機農業を営むことで、農産物を収穫。成長の過程で大気中のCO2を吸収することで、カーボンニュートラルの一助に。そして、痩せた土地に適した大豆や豆を栽培していくとこで土壌も良くなり、次世代に豊かな農地を残すことができるのです。



収穫したての粒ぞろいの有機栽培の大豆。地元の農家も太鼓判を押す出来栄えだ。収穫量300キロを超える大豆は、千葉県市川市の福祉作業所によりカフェインレスの大豆コーヒー、匝瑳の職人により味噌に


コミュニティにとっては、さらにプラスな側面も。土地の賃料、農作物の売上げの他に、売電の収入の一部が地域の農業支援、環境保全、子どもたちの育成のための基金として活用されるのです。そして、何よりも地元の方々にとってうれしいのは、農業や発電事業にかかわる雇用が生まれ新しく人々も集まることで、地域がにぎわい活性化することです。ソーラーをみんなでシェアすることにより、未来の輪が広がっていくのです。



「市民エネルギーちば」と匝瑳の農家の方々。「東南アジアやアフリカなど、インフラに恵まれない地域でも、太陽があれば発電できますし、日蔭もつくれるので砂漠のような熱暑の土地でも、農耕栽培に活用できます」と、「ソーラーシェアリング」の可能性を語る「市民エネルギーちば」の山内猛馬さん(右)


昨年の秋に「市民エネルギーちば」のスタッフの方々とともにソーラーパネルを設置してから、私たちは、この1年間ことあるごとに匝瑳の地に足を運んできました。パネルの取り付けやストアの看板の設置、真夏の炎天下での雑草取り、スタッフの見学ツアー……。何よりも印象深かったのが、9月に行われた「匝瑳ソーラーシェアリング収穫祭」です。「市民エネルギーちば」が中心となり、地域の方々を「匝瑳ソーラーシェアリング」に迎えるお祭りです。地元の飲食店が出店し和太鼓の演奏やライブなど縁日のようなにぎやかさ。ロンハーマンも今回、皆さんに混じって初出店。私たちが企画したコンテンツは輪投げやピンボール、ワークショップなど老若男女、家族でも参加できる内容に。いらっしゃった方々の笑顔がとても印象的。何よりも参加したスタッフが一番楽しんでいるようでしたが……。



「匝瑳ソーラーシェアリング収穫祭」に初参加したロンハーマンのスタッフたち。人とのつながりをテーマに、電気やガスなどエネルギーを消費しない手づくりのコンテンツを企画。ライブにも飛び入りで参加。「地元の方々と一つになった感じがあって、こういう体験は他ではできないと感じました。最後はみんなでハイタッチして抱き合いました(笑)」


「発電で利益だけを目当てにしている企業は、ソーラーパネルを建てても、ほとんど現地には来ません。私たちはそういうところではなく、環境に対して向き合っていく方々とずっとお付き合いしていきたい。ロンハーマンの皆さんは実際に足を運んで、発電の仕組みや農業にも共感をしていただいている。一緒にやらせていただいて、本当にありがたいなと思います」と、「市民エネルギーちば」の山内猛馬さん。ロンハーマンの姿勢を評価していただき、今年は「ロンハーマン匝瑳店」のソーラーパネル1号機に続けて、さらに近隣エリアで2号機、3号機とコラボレーションすることができました。2023年には4号機も新設する予定です。



この1年間でロンハーマンの「ソーラーシェアリング」は3号機まで発展。3号機のパネルの下には麦の苗が。いつかは麦芽を使ってオーガニックビールを醸造したいという声も。「ロンハーマン匝瑳店」オープンを機に、スタッフからさまざまなアイデアが生まれていく


2022年、私たちにとっては特別な一年になりました。ファッションの世界にいながら、再生可能エネルギーを生み出したり、有機野菜の農業にかかわるとは想像もしていませんでした。ですが、未知なるフィールドに歩み出したことで、さまざまな経験と知識を得ることができたことは刺激になりました。スタッフの中からは、新しいアイデアが次々と生まれています。収穫した大豆を使って新しいヴィーガンメニューを作り、ロンハーマン カフェで楽しんでもらいたい。麦が実ったらビールを醸造したい。いつかお客様を「ロンハーマン匝瑳店」に招いて、コミュニティと触れ合うイベントを主催したい。環境に対する私たちの歩みはまだまだ小さいですが、2023年、そして未来に向けて一歩一歩進んでいきます。

Latest Issue

Back to Index