Journal

-Meets Your Artist- Hiroyuki Seo

-Meets Your Artist- Hiroyuki Seo

Ron Herman Journal

Issue 28Posted on Aug 20.2021

アートは見る人の心を揺り動かし、時に日々の生活に新しい光を差し込ませてくれます。「ファッションとは愛にあふれ、刺激的で楽しく、自由であるべきだ」とは創業者ロン・ハーマンの言葉ですが、この「ファッション」というワードは「アート」に置き換えることができるでしょう。ファッションとアートと形は違いますが、その先にあるのはみんなの「スマイル」そして「幸せ」ではないでしょうか。

そのような思いから、ロンハーマンは、これまで同じフィロソフィーを共有する国内外のアーティストの皆さんとともに、コラボレーションをしてきました。今回、紹介するのは写真家のHiroyuki Seoさんです。

2年かけて撮影したジョシュアツリーのポートレート。この時の経験が、写真家としてのSeoさんに啓示を与えることになった

どこまでも続く乾いた大地と澄み切った青い空のコントラスト。巨大な岩がゴロリと転がる中で、不思議な形をした木々があちこちで天に向かって、背を伸ばしています。ジョシュアツリー—— 開拓時代に旅をしていたキリスト教徒たちが、猛暑でゆらめいている神秘的な姿をジョシュア(聖書に出てくるジョシュア:モーゼを継いだ人物)に例えたことから名づけた砂漠を象徴する植物です。この植物が群生する土地は現在、国立公園に指定されていますが、不思議なパワーを宿しているといわれ、昔から多くのアーティストをひきつけてやみません。

カリフォルニア、サンディエゴを拠点に活躍する写真家、Hiroyuki Seo(セオ・ヒロユキ)さんもその一人。「大学生の時から、ジョシュアツリー国立公園にはちょくちょく行っていました。『この中で本当に一番いい木を撮りたいな』と思って、2年間かけて撮影しました。炎天下の中で向き合って、『木々は誰に対して美しい姿を見せているのだろうか』とか、いろいろなことを考えて撮りました」。

2018年、Seoさんは千駄ヶ谷店で開催したエキシビジョンでジョシュアツリーの写真を展示しました。モノクロームの陰影で映し出された姿が、砂漠という過酷な自然環境を生き抜く力強さを発していました。多くのお客様が作品の前で足を止めていたのが、とても印象的でした。

砂漠でキャンプをしながら撮りためた総数は1000枚を超える。Seoさんとジョシュアツリーがシンクロした瞬間が切り取られている

Seoさんはファッションのエディトリアルやコマーシャルの世界で活躍する写真家として知られています。作品はどれもハイファッションでクール。Seoさんの人柄もそうかと思いきや……いやいや、とてもピュアでメローな方。話をうかがった時も、サーフィンを楽しんだ海上がりに、自宅のパティオで愛犬とともにリラックス。ずっと笑顔を絶やさないSeoさんに私たちもひき込まれていきました。

アメリカで暮らして14年になるSeoさん。日本の大学を卒業後、23才で英会話を習得するために渡米。「英語が話せないから、サーフィンをやっていれば友達ができるかな」と海に通い始めたそう。結果、思惑は的中。サーフィンを通じて交流が広がり多くの友人が。学生時代に不動産の資格を取得していましたが、「アメリカの生活が楽しすぎて、将来、違うことをしたい」と思うように。「その時の頭の中には、選択肢が今までやってきたことしかなかったんです。音楽、野球、スキー、釣り、そして写真。野球は中学で挫折、音楽も挫折したばっかり……」。そして、消去法で残ったのが子供のころから楽しんで撮っていた写真でした。

ファッションフォトグラファーとして一線で活躍しているHiroyuki Seo(セオ・ヒロユキ)さん。自らが表現したいことを写真で伝えようとするアーティストでもある


意を決して、カリフォルニアのパサデナにあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインの夜間コースで写真の基礎を取得。その後、1年かけて世界一周の撮影の旅へ。目的は、世界で活躍する多くのクリエイターを輩出している昼間部に入学するための作品づくり。いざ旅立ってみると「世界一周って誰でも簡単にできるのでは」という疑問が。悩みに悩んでいるうちに、「どんどん危ない所に行くようになっていきました」。結果、「ホテルから買い物に出て戻ってくるまでに、スリに2回もあう」ような国に滞在するようになっていたそう。ですが、Seoさんの持ち前の明るさとポジティブさで、現地の人たちにも受け入れられるように。旅を終えた後、彼らを被写体としたポートレートやドキュメンタリーをまとめた作品が評価され、奨学生として入学ができました。

そこで教壇に立っていたのはアメリカを代表するファッションフォトグラファー、ポール・ジャスミン氏。Seoさんは才能を見出され、在学中からプロの写真家として活躍。卒業後、仕事の場をニューヨークに移しましたが、2年前に西海岸に戻ってきました。

Seoさんが撮影で大切にしていることは、いかに楽しめるか。それは自分だけではなく被写体となるモデルも然り。
「モデルが楽しんで、僕も楽しい気持ちで撮影する。そういう瞬間に、写真は必ずよくなる。もうそれを信じて『ここに表れたものが一番いいものだろう』と思って、楽しんでやっていますね。それ以外、ほとんど何も考えていないです。ただそこに表れているものが僕の写真である、と思っています」
写真を撮ることはサーフィンと似ているとSeoさん。同じ波が二つとないように、その時、無二の瞬間で、いかに被写体とシンクロできるかを大切にしているのです。

8月28日、Seoさんが撮影したジョシュアツリーの作品100点を1点ずつTシャツにプリントしてリリース。100枚限定の貴重なアートピースだ


今シーズン、Seoさんと私たちは新しい試みをしました。Seoさんが撮影した膨大なジョシュアツリーの作品の中から100枚を自らセレクト。それを1カットずつTシャツにプリントして限定リリース。世界でたった一枚だけのオリジナルTシャツです。どれもが個性的な表情で、まるで人間のポートレートのよう。Seoさんとジョシュアツリーがシンクロした瞬間が切り取られています。あなたのお気に入りの一枚は? ぜひ、ストアで見つけてください。

Latest Issue

Back to Index