完璧なニット−−。ロンハーマンでは、さまざまなアイテムを扱っていますが、なくてはならない大事なブランドの一つが「AURALEE(オーラリー)」です。2016年にコラボレーションして以来、すっかり定番になったリブニットが「AURALEE for Ron Herman」の “Giza Boat”(ギザボート)。着心地もデザインもよく、しかも長く着ることができる。不思議なのが、ほとんどの方が体型を選ばずに奇麗に着られること。リブがしっかりしているから、体のラインを変に拾わないのでしょう、カジュアルなデニムでも、ドレスのようにラグジュアリーなスカートやパンツにも、シームレスで楽しむことができます。デビューから既に5年経っていますが、日々、洗濯機で洗っても型が崩れないと、お客様にも評判です。何よりも私たち自身がギザボートのファンなのです。
さまざまなブランドでパタンナーやデザイナーとして活躍した経験を生かし、2015年春夏より「AURALEE(オーラリー)」を立ち上げる。素材の膨大なリサーチを初め、創作活動の多くを生地作りに費やす
「料理と同じように、味付けとか見た目だけではなく、服も素材にいきつきます。やはり、よい原料でよい生地を作りたい」
ギザボートが張りを失わず、型崩れせずに丈夫に着られるのは、「ハイゲージ」と呼ばれる度目が詰まった編み地を使用しているから。この編み機を持つニット工場は国内でも屈指
素材にこだわるデザイナーは少なくありません。ですが、岩井さんの情熱と行動力には驚きます。時には、目当ての素材がどのように生まれているか、自分の目で確かめるためにモンゴルやペルーまで足を運ぶことも。
「現地の方が喜んでくれるんです。彼らの顔をもわかって、その背景も知ることができるから、服を作る過程でも、愛着や責任感が生まれるんです」
ギザボートの素材は、世界三大綿の一つ「超長綿」と呼ばれる繊維が長い希少なコットン。美しい光沢と上質な着心地は特別な編機と精細な作業から生まれる。毎年、リピートして購入するファンの方も多い。定番のボートネックの他にタートルネックも、昨年満を持して登場した
ギザボートの素材であるギザコットンも、岩井さんがほれ込んだ素材の一つ。世界三大綿の一つで「超長綿」と呼ばれる繊維が長い希少なコットン生地です。無垢な白さが美しく、しなやかな風合と艶やかな光沢を生みます。コットンの目星がつき、いよいよニットに。しかし、岩井さんが自分に課したハードルは高いものでした。
「AURALEEを立ち上げる時に、『こういう編み地を作りたい』という理想がありました。リブだけど洗っても張り感というか、締まった感じが消えない。そのためには編む密度、度目(注:目の詰まり)を通常では考えらないくらいに詰めなければならない。まず編む機械自体が少ないし、すごく労力がかかります」
そして、全国をリサーチする中で見つけたのが、山形のとある工場でした。
工場の代表は「絶対、編みを極めたい」と口にする。創業70年以上の老舗だが、歴史に甘んじることなく新しい技術を意欲的に導入している。デザイナーの難しい要求にも応じ、服づくりのプロからの信頼も厚い
山形市は戦中、戦後にかけて繊維産業が盛んでした。その老舗のニットメーカーの一つが、岩井さんの編み地を実現できる編機を持っていたのです。特別な機械で、国内で稼働しているのは唯一。ただ機械があれば編めるわけではなく、糸の知識や豊富なノウハウと経験を持った技術者の力が不可欠なのです。
「絶対、編みを極めたい」と日々口にする工場の代表は、岩井さんが舌を巻くほど編機に対して情熱を持っているそう。
「現場まで、ものづくりに直接関わっていて、目がゆき届いている。そういう社長がいて、機械があって、最終工程の洗いまで社内で一貫している背景があるから、実現できる。すごく思い入れのある編み地なんですよ」
蔵王を始め雪山に囲まれた風光明媚な山形盆地。この地域は戦中、戦後から繊維産業が盛んだった。農家では羊毛を育て、ウールの原料にしていたという
デザイナー、綿花を育てる人、工場の技術者、そして、着る方々、さまざまな思いが重なって、完璧な一枚が生まれるのでしょう。ロンハーマンも、AURALEE、岩井さんとともに新しい服づくりを目指していきます。どうぞ、お楽しみに。