冷たい飲み物や日焼け止め、タオルを入れてビーチへ。お気に入りの本や雑誌、ランチボックスとともに公園へ。ワインボトルやデリを詰め込んでホームパーティに。近所へふらりと出かけたり、キャンパスやオフィスへのお供に。もちろん、ショッピングにも……。カジュアルに使えながらも丈夫で長持ち、そしてデザイン性にも優れたリユースバッグ「BAGGU」(バグゥ)。今やカリフォルニアのライフスタイルには欠かせないアイテムの一つです。
「BAGGU」は、2007年、南カリフォルニア、サンディエゴで誕生しました。手がけたのはEmily Sugihara (エミリー・スギハラ)さん。「持っているだけで気分が良くなるバッグをつくりたかったんです。当時、見た目が良くて手ごろな価格のショッピングバッグはなかったので」とエミリーさん。自分がいつも愛用している手づくりのリユースバッグを、みんなにも使ってもらいたい。当時エミリーさんは大学を卒業したばかり、アートの専門カレッジに通った後に1年間ファッションブランドでデザイナーを経験。ファッション業界で起業をするのに十分なキャリアとはいえませんでしたが、裁縫が得意な母親Joan(ジョアン)さんとともに自宅のリビングでバッグをつくり始めました。オーダーやデリバリーも自分と弟という、まったくのファミリービジネスでした。
ミニマルで機能的なデザインは街やアウトドア、シーンを選ばずにフィットする。「デザインをする際には、できる限りシンプルにすることを考えて美しさを追求します」と、デザイナーで創業者のEmily Sugihara (エミリー・スギハラ)さん
「当初、『BAGGU』のコンセプトを人に説明すると、『リユースバッグなんて成功しないよ』と忠告されることもありました」。ですが、エミリーさんには強い思いがありました。「カリフォルニアで育ったので、水不足など環境問題はいつも身近にありました。使い捨てのプラスチックバッグではなくリユースバッグを使っていたのも、そのためです。本当に機能的で美しくて使っていて楽しいバッグをつくれば、ずっと長く使ってもらえられるのでは。それがサステナブルなことにつながると考えていました」
繰り返して長く使える高い耐久性、環境に配慮したリサイクル可能な素材、そしてムダのないつくり。このこだわりを「BAGGU」で実現するためにエミリーさんは、さまざまな試みをしました。そして見つけた答えが「リップストップナイロン」でした。パラシュートにも使用される抜群の強度を誇るナイロンです。しかも「クローズループ」と呼ばれる無限にリサイクルできる可能性を秘めた素材。「『BAGGU』のスタンダードバッグの耐久性は10キロから15キロ。もしかしたら、レンガを入れても大丈夫かもしれません」と笑うエミリーさん。さらに製造方法にも独自の工夫を。一枚のナイロン生地から一つのバッグをつくることで、端材を減らしたのです。実はスタンダードバッグに付属する専用のキャリーポーチも、端材を再利用したもの。廃棄するナイロンを極力少なくしたいという思いから生まれたのです。
エミリーさん(右)と母親のJoan(ジョアン)さん。二人が愛用していた手作りのリユースバッグから「BAGGU」は生まれた
「『BAGGU』をスタートしたころ、ちょうど人々は『グリーン』で『サステナブル』なものに目を向けるようになっていました。そのおかげで、私たちは最初から順調に成長することができました。社会がエコロジーを意識するようになり、メディアが『BAGGU』に注目してくれたのです。とても助かりましたね」。今では業種の垣根を超えて、さまざまなブランドや企業とコラボレーションをすることも増えて、その人気は世界にも広がりました。多くの方が「BAGGU」のものづくりの姿勢に共感をしたからです。
コラボバッグの他、インラインでもポーチを3点セットで展開。フラットなデザインとマチ付きがあり、生活のさまざまなシーンで活躍しそう。気分に合わせてカラーをチョイスするのもよし
エミリーさんは、若くしてバッグというアイテムに新しい価値観を生み出すことに成功しました。今後、「BAGGU」をどのように育てていくのでしょうか。「決して世界を狭めているわけではないのですが、バッグというカテゴリーには、まだまだカバーできるものがたくさんある気がしています。私たちがつくるすべてのバッグが、その人生を長く実りがあるように送れることを優先してものづくりをしていきます。トレンドを追い求めることはせずに、その時々のクリエイティブなビジョンに忠実でありたいと思っています」。エミリーさんの思いは、これからも「BAGGU」に詰め込まれていくことでしょう。