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CROSS TALK05 “SZ BLOCKPRINTS”  Sarah Zellweger【後編】

CROSS TALK05 “SZ BLOCKPRINTS” Sarah Zellweger【後編】

Ron Herman Journal

Issue 70Posted on Jun 23.2023

ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。第5回目のゲストは「SZ BLOCKPRINTS」のデザイナーSarah Zellweger(サラ・ゼルウェガー)さん。イギリスから訪れたサラさんとともに、ウィメンズディレクター根岸由香里が、京都を巡ります。古都で過ごした一日、そして、服づくりへの思いを二人で語ります。


元気と愛、幸せを生む、ブロックプリントを世界へ


根岸:私は「SZ BLOCKPRINTS」を見た瞬間に魅了されましたね。今でも鮮明に覚えています。その柄が出来上がるバックグラウンドを知りたくて、3か月後にはロンドンに行ってサラに会いましたね。実際にお会いしてみて、パワーだけでなく豊かで温かな心が伝わってきました。サラの手がけた服を身に着けることで、元気になれる、幸せになれる、ということを経験したんですよ。

サラ:それこそが私が「SZ BLOCKPRINTS」を世に送り出す時に望んだこと。それをわかってもらえて、心から感謝しているわ。ロンハーマンには私のポリシーである「スローファッション」、「スロークラフト」、「サステナビリティ」を理解していただきとても感謝しています。



古都での一日を終えた「SZ BLOCKPRINTS」のデザイナー、サラ・ゼルウェガーさん。京都らしい町屋の一室でしばし休憩


根岸:改めて聞きたいのですが、なぜ「SZ BLOCKPRINTS」は伝統的なハンドプリントにこだわっているのですか。

サラ:それはとても大切なこと。なぜなら、それはジャイプール(「SZ BLOCKPRINTS」の工房の所在地)という特定の場所、インドの私のプロダクションチームがいる土地の歴史だから。そこは、多くの魂とエネルギーと愛と匠の技にささげられた長い年月の血統なの。そして私たちがその伝統的なプリントに甦らせてアップサイクルをして新たに現代の世に送り出し、人々に評価される。それはどちらもブロックと手作業という二つの同じ要素から始まったこと。その二つが融合して魔法が生まれ、ブロックプリントが創造されたの。だから、私のブランドの最も重要な部分は、私のクラフトそのものとクラフトチームとメンバーを支えること、今のハンドブロックの手法と伝統をこのまま保持して続けていくこと。それが私の使命。そしてさらに進化や改革をもたらしていけたら、と考えているわ。

根岸:たくさんの愛が込められているから、「SZ BLOCKPRINTS」を着るとハッピーになれるのですね。

サラ:私たちはブロックパターンのことを「パターンプリスクリプション(処方箋)」と呼んでいるの。なぜなら、医者に薬の処方箋をもらってそれを飲めば、病気がよくなるでしょ。それと同じ、この服を身に着ければ「気持ちが元気になれる」という考え方。パターンは実はとても感情を含んでいるの。





骨董屋で手に入れた伊万里焼と更紗(さらさ)の工房「前仁」で体験してつくった手摺りのプリントを手に、京都の旅を振り返る


根岸:日本には「温故知新(おんこちしん)」ということわざがあります。古きを生かして新しいことにも挑戦する。サラのスタイルはまさにそうなのでは。

サラ:まさにその通り。過去から学んでインスパイアされ、その伝統的な技術を基にして新しくイノベーションしていくことは、とても興味深くてワクワクすること。特にお客様にとってはそうだと思う。私は日本の美意識の「わび・さび」が素晴らしいと思っていて、それはすべての手づくりのアイテムに実にうまくフィットする感覚だと思うの。一つ一つのピースが小さな美術館の芸術作品だと考えているわ。それがすべて手づくりで、一つ一つは完璧ではないけれどもそれが集まると完璧になる。そしてそれが大きな力になる。

根岸:「わび・さび」を知っているとは!?

サラ:だから私は今日、京都の染色を見られてとてもうれしかった。もちろん作品自体は完璧だけど、その中に潜む不完全さ、それが「わび・さび」だと思うの。手づくりの作品一つ一つがそれぞれ別の特徴を持っているから。その不完全さが集まって完璧ができていることを目の当たりにした思いだわ。私はその考え方がとても好き。「温故知新」——もし50年後に私の服がショップに出ていて、その時代の若い方がそれを手に取り着てくれたら、こんなにうれしいことはない。きっとそうしてくれると思う。だってこのデザインはタイムレスだから。



「サラの豊かで温かな心が、『SZ BLOCKPRINTS』を着る人に元気と幸せを与えてくれる」と語るウィメンズディレクター根岸由香里。京都での一日を通して、その思いはさらに深まった


根岸:サラが今日着ている「SZ BLOCKPRINTS」の服は、今年の秋冬のプレコレクションですが、普段あまり見られないネイビーやブラックなどの色が使われてますね。

サラ:この秋冬コレクションはモノトーンを基調にしたの。私たちはとても美しいインディゴブラック(藍黒)をつくり出せた。私は「黒」という色でとてもシックで新鮮でしかも白と組み合わせて遊ぶ、ある意味ドラマティックな感覚を生み出したの。冬用の新鮮な色の組み合わせ。黒と白というのはブロックプリントの伝統的な色ではない。今までになかった色調でいったいどんな結果を生むのかという期待であり、実験なの。今回、お客様がどのような反応をされるのか、すでにお持ちの服とどんな風に合わせていくのか、そして普段から明るい色や柄ものは着ないお客様に見ていただき、どんな反応をされるのかがとても楽しみ。毎回コレクションが終わると、次の新しい色の組み合わせを考えるのが楽しいけど、今回もまさか黒と白の組み合わせがこんなにワクワクするものになるとは思ってもいなかった。やってみなければわからないわ。それが進化ですね。





「SZ BLOCKPRINTS」の秋冬のプレコレクションにはモノトーンのデザインが登場。目にも鮮やかな美しい色遣いで人気の「SZ BLOCKPRINTS」に新たな魅力が加わった


根岸:「SZ BLOCKPRINTS」といえばカラフルな柄が魅力ですが、今回のモノトーンもとても素敵。もっともっといろんな可能性があるんだなと思いました。まさしく「進化」ですね。私たちも服だけに留まらず、自由に考えて一緒に面白いことができれば。例えば、服だけでなく体験。ロンハーマンが、今回の京都のようにジャイプールの「SZ BLOCKPRINTS」の工房へお客様と訪れるツアーを企画するのも面白いですね。

サラ:それは楽しそう! みんなで歓迎するわ。



「服だけでなく体験を通して、一緒に『SZ BLOCKPRINTS』の魅力を発信していければ」との根岸の言葉に笑顔で応えるサラさん。今後のコラボレーションが楽しみだ



Profile

サラ・ゼルウェガー Sarah Zellweger

2016年、インドの伝統的なブロックプリントとモダンファッションとを融合させたレディスウェア「SZ BLOCKPRINTS」をスタートさせる。ブロックプリントのレジェンド、キティ・レイさんが創始したインド・ジャイプールの工房で、地元の職人たちとの協業にこだわってものづくりをする。過去のインタビューはこちら。


The Innerview 04:Sarah Zellweger (SZ BLOCKPRINTS)


撮影協力:株式会社elle pupa

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