“LOVE FOR TOMORROW”——これからのロンハーマンが目指すビジョンとして、2021年に私たちが掲げた大切な言葉です。自分たちにできることで、より良い未来を生み出すことができたら。私たちにできることとは何か。そのよりどころとなったのが、創業者のロン・ハーマンが胸に抱いてきた哲学です。「ファッションとは愛にあふれ、刺激的で楽しく、自由であるべきだ」。愛を持って明日へ向けて行動することで、今日よりも素晴らしい自然環境や社会を創造することに貢献ができるのでは。そのような想いのもと、CO2排出量ゼロを目指してストアでの使用電力を再生エネルギーに転換したり環境負荷の少ないアイテムを積極的に取り入れたりと、一つ一つ取り組んできました。
アフリカ南部に位置するザンビア共和国。広大な大地から「farmers 360° link 」で使用する「Cotton Chiko Africa」は生まれる
ザンビア中央州、綿花農家の村の一つ。数世帯が井戸を中心に暮らしている。隣の村まで5キロから10キロという距離だが、徒歩での移動が基本
サステナビリティヴィジョンにも掲げているのが、2025年までにオリジナルアイテムで使用するコットンのサステナブル比率を100パーセントにすることでした。サステナブルなコットンといえば、オーガニックコットンやリサイクルコットンが代表格でしょう。いずれも環境に負荷をかけない素晴らしいコットンですが、もっと他にも私たちの哲学をカタチにできるものがあるのでは。模索している中で出会ったのが「farmers 360° link 」(ファーマーズ360°リンク)が手がけるコットン「Cotton Chiko Africa」(コットン・チコ・アフリカ)です。
ングーズー村のリチャード・シマンヤマさんご夫妻。写真撮影にはにかみながらも農作業をいそしむ。ザンビアは真面目で勤勉な国民性で知られ、日本人と似たところがあるともいわれる
「Cotton Chiko Africa」は、環境、経済、社会の持続可能性に関する厳格な基準を満たしたプリファード(環境に好ましい)コットンとして、「Cotton made in Africa」という国際的な組織からの認証を受けている
「Cotton Chiko Africa」は、生産地であるアフリカの零細農家へ適正な価格・適切な形で利益が還元されることを目的に生まれました。いつ誰がどこでどのように生産したかがわかる、いわゆるトレーサブルなコットンです。ファッション業界に限らずトレーサビリティは、現在では珍しいことではありません。ですが、「farmers 360° link」が画期的なのは、消費者が生産者のコミュニティとデジタルプラットフィームでつながれること。「Cotton Chiko Africa」でつくられた服を手に入れたお客様が、そのコミュニティを応援するさまざまなプログラムを選ぶことができるのです。さらにその後も、応援したプログラムの進捗やコミュニティの農家の人々の想いなどが届けられます。文字通り、双方が「LINK」できるのです。
環境と生産者の健康に配慮して農薬の使用は必要最小限に。一つずつ丁寧に手摘みしたコットンのみを使用
「farmers 360° link 」とコラボレーションするのにあたり、私たちが選んだオリジナルブランドは「8100」(エイティワンハンドレッド)。ネーミングの由来はロンハーマンのカリフォルニアの本店、メルローズストリートのアドレスの番地から。コンセプトは「ワンマイルウエア」。ワンマイル(約1・6キロメートル)という日々の暮らしのエリアで、愛犬の散歩や朝食がわりのスムージーを買いに行ったりと、ロサンゼルスで生活していたら欠かせないTシャツやスウェットなど日常のアイテムをラインナップ。「カジュアルで自分らしくいられることが、一番ラグジュアリーなことなんだ」というロン・ハーマンの想いがこもったブランドの一つです。もっとも身近で毎日のように着るようなアイテムだからこそ、「farmers 360° link 」の願いも伝わるのでは。
ザンビアは「Beacon of Peace」(平和の曙光)と称される平穏な国。特に農村部のコミュニティは絆が固く、みんなで助け合いながら暮らしている
それでは今回「8100」の素材の源となったコットン畑を訪ねてみましょう。アフリカ南部の内陸国のザンビア共和国。面積は日本の2倍もありますが、人口は1900万人ほど。70ほどの民族に分かれていますが、みんな穏やかに暮らしアフリカでもっとも平和な国の一つといわれています。国の象徴は「ビクトリアの滝」。幅1・7km、落差110mという世界三大瀑布の一つです。野生動物の宝庫で、ライオンやキリン、ゾウやバッファローなど60種類もが生息しています。その中央州の1000余りの綿花農家が「farmers 360° link」と契約。さらに、その中から100軒ほどの農家が「8100」のためにコットンを栽培しました。
今シーズンの「8100」のウィメンズはスウェット、Tシャツ、パンツの全6型のコレクション。「Cotton Chiko Africa」を日本の紡績工場で紡ぎ、その糸を用いて生産
カジュアルな「ワンマイルウエア」ながら、上質感が漂う「8100」。心も体も軽やかになるこれからの季節、さまざまなシーンにフィットしそう
日々、大人たちは協力して農業にいそしみ、子どもたちは学校へ。余暇は、女性たちは色とりどりの服をまとって讃美歌をコーラス、男性たちは街頭のテレビでスポーツ観戦、子どもたちはサッカーを楽しんでいます。「コミュニティのつながりが強く、幸せに暮らしている」と都会住まいのザンビア人もうらやむ農村の暮らしですが、電気やガス、水道は未発達。子どもたちが高等教育を受ける機会も少ないのが現状です。今回「8100」では、「綿花の生産量を上げるための肥料を支援」、「未来を担う子どもたちのための食事を支援」、「インフラを支えるためのソーラーパネルを支援」という三つのプログラムを用意。「8100」を手に入れたお客様それぞれに選択していただきます。
「8100」のアイテムのそれぞれにQRコードのタグが。アプリを通じてコットンを生産した農家のコミュニティに対して応援プログラムを選択できる。また、プログラムのフィードバックや現地からのリポートも手元に届く
実は「farmers 360° link」の試みが実現したのは、ロンハーマンが初めて。ゼロからのスタートということもあり、私たちも「farmers 360° link」のスタッフとともに試行錯誤を繰り返してきました。予想以上に時間もかかりましたが、「8100」のために収穫された「Cotton Chiko Africa」も無事に日本に届きました。「農家の方は、今回の取り組みに感謝しています。子どもたちを学校に行かせたい。もう少し良い教育を与えてあげたい。そのような子どもたちの将来に向けて還元していきたいという想いを農家の人々は持っています」と「farmers 360° link」のスタッフ。「Cotton Chiko Africa」の「Chiko」は、ザンビアの言葉で「愛」を意味する「Chikondi」に由来しているそう。文字通り、このコットンにはさまざまな人の想いと愛がこもっているのです。
コミュニティスクールに集う子どもたち。農家の方々は「この子どもたちの未来に還元したい」と「farmers 360° link」と手を取り合っている
いよいよ「Cotton Chiko Africa」でつくられた「8100」が店頭に登場します。服が素敵であることはもちろんのこと、その先にお客様自身が選択をして、変わる未来があるということ感じていただければうれしい限りです。ロンハーマンでは、これからも「farmers 360° link」との取り組みを広げていく予定です。“LOVE FOR TOMORROW”——多くの人々の未来へLOVEを込めて。