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Larry Schaffer (I’M OK)

Larry Schaffer (I’M OK)

Ron Herman Journal

Issue 64Posted on Mar 17.2023

ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。今回のゲストは、「I’M OK」のオーナーLarry Schaffer(ラリー・シェーファー)さん。ハリウッドに本店を構える「OK the store」が、2019年から「I’M OK」として日本でも展開。ラリーさんが世界中からセレクトした本や雑貨、ジュエリー、テーブルウエアなどのアイテムが人気を呼んでいます。ロンハーマンでも、2021年に千駄ヶ谷店、みなとみらい店の2店舗でショップ・イン・ショップをオープン。さらに今シーズンからは、新しく「I’ M OK KIOSK」も展開がスタートします。日本を訪れたラリーさんにお話をうかがいました。

 「I’M OK KIOSK」のディレクションのために来日したラリー・シェーファーさん。今回の目的の一つはスタッフとコミュニケーションをすること。自身の哲学を伝えるために言葉を紡いでいた

 

——ラリーさん、日本のロンハーマンへ、ようこそ! 「I’M OK KIOSK」をロンハーマンでも展開することができて、スタッフみんな喜んでいます。

ロンハーマンのような大きなショップが、「OK the store」のような小さなストアの存在、そして、何か面白いことをやっているということに気づいてくださったことをうれしく思います。私がセレクトしたアイテムが、日本のお客様の目にとまるということに興奮しています。

——今回、ラリーさんが日本のロンハーマンに訪れるのは初めてですが、感想はいかがですか

ロンハーマンはLAの「OK the store」と同じような雰囲気があります。とてもカリフォルニアっぽくて、南カリフォルニアがあふれているイメージです。エレガントかつカジュアルで、洗練されている。すべて創業者ロン・ハーマンのライフスタイルのアイデアから生まれています。そんな「OK the store」と同じ匂いがするロンハーマンの仲間になったことは、大変興味深く、面白いことだと思います。ロンハーマンは、ただ“カリフォルニア”を日本に持ってきているのではなく、この土地、街に合ったライフスタイルを提案しているところが素晴らしいと思います。

 ロンハーマン千駄ヶ谷店の「I’M OK」のショップ・イン・ショップ。ラリーさんの思いが詰まった空間


——そう思っていただけて、とてもうれしいです。ちなみにラリーさんは日本にはどのような印象をお持ちですか。

日本はとにかく特別に素晴らしい土地、人々も本当に素晴らしい。そして、日本人は特別な情熱を持っていますね。しかもそれが一人一人違っている。例えば、古本屋の店主の方なんて、本当に信じられないくらいの情熱と知識を兼ねそなえている。これは日本人独特の感性でしょう。サーフィンであれクルマであれ家具のデザインであれ、興味のあるものに情熱をもって突き詰めていく。それは本当にすごいことだと思います。そんな独特な感性を持っている日本人が、私のコンセプトは日本できっと受け入れられるから出店しないか、と相談してきてくれたことは、本当にびっくりしたし感動したし、実際にそれが現実のものになってとてもうれしく思います。

——今回のラリーさんの滞在で驚いたのは、星付きのホテルに宿泊しているのに、朝食はホテルのレストランではなく、わざわざ庶民的な立ち食いそばに足を運んで食事をしていること。しかも、スタッフと一緒ではなく一人で。びっくりしました。

私にとっては普通のことですよ(笑)。その街に住む人々が実際にどんな生活をしているのかを知りたいからです。また、日本とは違う文化を持つ自分が、その国の文化を経験するとどうなるのか、どんな気持ちになるのかという自己分析もしてみたいですからね。

日本のロンハーマンならではのラインナップにも興味津々。「I’M M OK』もその土地に合わせて展開することを大切にしています」

 

——さすが若いころから世界中を旅しているだけありますね。改めて「I’M OK」のコンセプトを説明していただけませんか。

うーん……。「I’M OK」をひと言では言い表すことはできないし、したくないというのが正直な気持ちです。私自身が決めるのではなく、いらしていただいたお客様が感じて表現してほしいと思っているからです。たいてい、お店というのは、扱っている製品をカテゴライズして売りますよね。例えば、服、シューズ、アクセサリー、子供服、雑貨など。ですが、「I’M OK」は違います。私たちはライフスタイルを提供しているのです。暮らし自体に対する意識や思考をコンセプトにしています。ですから、先ほども言いましたが、ストアが存在する土地によってとらえ方も違ってきます。

——なるほど。ですが、ラリーさんのライフスタイルが反映しているのは確かですよね。それが多くの方に受け入れられた。

自分がやりたいこと、やるべきことをやってきただけだと思っています。確かに私はジュエリーも本も好きで子供たちが喜ぶものが好きです。長い時間をかけてさまざまなものを探し出して、それらをずっと足し続けてきて、全部を一緒にしてきました。しかもそれはとても自然な形です。25年前に「OK the store」を始めたときはもっとシンプルなコンセプトでした。本当にただただ自然に、私だけでなく、スタッフそしてお客様とのさまざまな会話の中で、「これもいいんじゃない」、「あれも取り入れてみよう」とどんどん広がっていきました。だから小さな物たちの集合体のようになりました。実は、一つのものに集中してそれを販売することにも魅力を感じます。というか、それができている人がうらやましい。でも私にはそれが似合わないことはわかっています。ありとあらゆる土地へ旅をしてさまざまな人に会い、良いものに合い、それを集めたい。この私の気持ちは抑えられないんです。

 

自転車やオートバイ、写真集やヴィンテージブックはラリーさんのお気に入りの一つ。日本に滞在中も古本屋巡りを楽しんでいた

 

——「OK the store」で扱うアイテムは多彩ですよね。ですが、ストアのディスプレイはどこか統一感があり、見ているだけで楽しくわくわくします。何か秘訣があるのですか。

私は扱うアイテムの一つ一つのバックグラウンドを大切にしています。そのアイテムがどこから来たのか、デザイナーはどんな思いでつくったのか、そのようなすべてを受け止めてストアに置いているのです。一つ一つにそれぞれのストーリーがあるわけです。似通ったストーリーを持つものを一緒に並べていく、そしてそのストーリーがみんな上手く融合して、相乗効果を上げていくようにディスプレイを考えています。

——なるほど。どのアイテムにも思い入れがあるからできることだと思います。

日本のロンハーマンのストアのディスプレイも素晴らしいと思いますよ。私が学生だったころのLAのロンハーマンが当時の雰囲気を残しつつ、21世紀の新しい風ともに融合し、いろいろな人々に歓迎され、人々をひきつけています。とても心地いいコンセプトになっていると思います。

——ありがとうございます! ところで、ラリーさんのものを選ぶ審美眼どのようにして養われたのですか。とても興味があるのですが。

何かものを買う。それは当然家の中に入ってくることを意味しています。その時、まずはよく考えるべきだと思います。買うものの質を上げていくことが大事なんです。良いもの、今後長く続けて使うことができるものを選ぶことが大切。それが私の哲学です。値段だけを見たら高い、と思うかもしれないですが、安いものを何度も買っては捨ててまた新しいものを買うのはエコではない。北欧では、代々家にある家具を引き継いで使っていきます。最初に買った時は高かったかもしれないですが、何十年も引き継いで使うということはエコだし、最終的にはとても経済的なことだと思います。自分が時間をかけて慎重に選んだものが家にあり、それを次の世代が引き継いでくれることは、大きな喜びです。長く私たちの商品を愛して使ってくれているお客様が「20年前に買ったものを今でも大事に使っています」という話を聞くとうれしくなります。商売的には良くないかもしれませんが(笑)。

 

この春、ロンハーマン神戸店、有楽町店、六本木店、辻堂店、RHC ロンハーマン川崎店、 豊洲店、熊本店に「I'M OK KIOSK」が登場。ロンハーマン・RHC ロンハーマンのリビングコーナーの特性を活かし「I'M OK」 の既存店舗とは異なる空間と「I'M OK」ならではの商品ラインナップが楽しめる。

 

——高価なアイテムでも長年、愛用することを考えれば、高い買い物ではない、ということですね。

私は学生時代、20世紀初頭にデザインされた家具にとても興味がありました。それで、初めての一人暮らしのアパートにそういう家具を置きたくて、貯金をしていろいろと探し回りました。そして、フランク・ロイド・ライトがデザインしたデスクに出合ったのです。自分の貯金では到底足りなくて、母に借金までして手に入れました。アパートに引っ越した時、部屋にはそのデスクしかなかった(笑)。もう30年以上前のことですが、今でもそのデスクを愛用しています。そのデスクは私とともにここまで旅をしてきました。そういう「これだ!」という直感が、今の「I’M OK」につながっていると思います。

——良いものを長く使う。それが本当のサステナビリティなのかもしれませんね。ロンハーマンもサステナビリティへの取り組みを行っています。流行に左右されない長年愛用できるアイテムをお客様へ提供することが、環境負荷を減らすことの第一歩だと考えています。

私はサステナビリティという考え方を、自分の経験から学びました。特に誰かから教えられたというものではありません。私が最初に働いた高級家具の会社が扱っていたアイテムがあまりにも高額で、誰でも気軽に購入できるようなものではなかったので、私のような普通の人々が買えるようなものを提供したいと思いました。高すぎるとお金持ちしか買えない。それではどんなに良いものも一般には広がっていかない。でも良いものを長く使うことはサステナビリティにつながっていきます。少なくていいので質の良いものを使う、それこそが大切だとずっと思っています。私がこだわっているのは使いやすさと一体感です。「I’M OK」で扱っているアイテムは幅広い価格帯です。もしかすると少し高いと思われるものもあるかもしれませんが、必ず長く使っていただけるものです。もちろん、それほど高価でないものもありますが、だからといって使い捨てとなるものではなく、やはり長く使っていただけるものをそろえています。

 

「『I’ M OK』はものを売るのではなく、ライフスタイルを提案するというコンセプトはロンハーマンも同じ

 

——最後にロンハーマンのお客様へメッセージをいただけますか。

とにかくロンハーマン、そして「I’M OK KIOSK」に足を運んでください。今までのロンハーマンにはなかった新しい面をお見せできると思います。そして、スタッフやお客様同士とのコミュニケーションを楽しんでいただければうれしいです。

——ラリーさん、どうもありがとうございました。

Profile
ラリー・シェーファー Larry Schaffer
1999年、ロサンゼルス、ハリウッドに「OK the store」をオープンさせる。独自のセンスでセレクトしたアイテムが人気を呼び、クリエイターやアーティストが集まるホットスポットに。2019年、海外初進出となるストア、「I’M OK」を東京にオープンさせた。そして2023年、ロンハーマン・RHC ロンハーマンに「I’M OK KIOSK」が登場

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