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The Innerview 03 : Luke Meier ( OAMC )

The Innerview 03 : Luke Meier ( OAMC )

Ron Herman Journal

Issue 43Posted on Apr 15.2022

現代的な審美性と革新的な技術を融合させた斬新な世界観を打ち出す「OAMC」(オーエーエムシー)。パリとミラノから発信されるプレミアムなメンズウェアのコレクションは、今、ファッション界で最も注目されているブランドの一つです。2022年、「OAMC」が新たにスタートしたプロジェクトが「RE:WORK」(リワーク)。このファーストコレクションは、日本ではロンハーマンだけが取り扱うことに。「OAMC」そして「RE:WORK」のコンセプトとは何か。プロダクトに込められた内なる想いを、デザイナーのルーク・メイヤーさんに聞きました。

ヴィンテージ、デッドストックのミリタリーウェアやブランケットなど、廃棄された服を素材に使った「RE:WORK」。過去のプロダクトが、ルークさんならではの新しい視点で現代によみがえる

—2014年に「OAMC」がスタートしてから、ファッション界から大きな注目を集めています。まずはブランドコンセプトを教えていただけますか。

「OAMC」は常に変化を続けているモダンなラグジュアリーブランドなんだ。人間としての僕たちの在り方や、いかに自然に物事が進歩していくかを反映していると感じている。もちろん人々の美意識は変わっていく。だけど、技術、素材の改良、視点も変わっていく。「OAMC」は僕にとってとてもパーソナルなもの、その時々にふさわしくて面白いと思うものを僕自分自身が表現する手段なのさ。僕はブランドのイメージが人々に常に認められていてほしいと思っているよ。それには非常に高い質のレベルを保つことが重要なんだ。

—これまでの8年間、そのコンセプトはずっと変わっていないのですか。

美意識が進歩し、僕たちはよりよいプロダクトをつくるための知識を得て素材をより深く理解するようになった。「OAMC」は常に変革していき、前進しているんだ。だけど、この進化を続ける中で、品質、反骨精神、コンセプトが最初からずっと強いままだということも事実さ。僕たちがはぐくんできた美学に興味を持ってもらいつつ、でもプロダクトには妥協していないという安心感をもってもらいたいと思っている。

—「OAMC」というブランドネームの意味は。

インスピレーションによって毎シーズン変わるんだ。2022年春夏のシーズンの「OAMC」の意味は“Original Artifacts Made Current”(本物を現代によみがえらせる)。「RE:WORK」のデビューシーズンであるという事実を直接的に表現しているのさ。


「『PEACEMAKER』というロゴは、文字通り平和をつくる人という意味だけど、銃という意味もあるんだよ。平和を実現させるためには時には強さが必要だということを強調しているんだ。このロゴで服を肯定的なイメージにしたい。とてもアグレッシブではあるけど、楽観的で積極的というメッセージが込められているんだ」

—なるほど。それだけ「OAMC」にとって、今シーズンにローンチした「RE:WORK」は重要なプロジェクトということですね。「RE:WORK」のコンセプト、このコレクションを通して伝えたいことをお聞きできれば。

コンセプトの最も大切な部分は、廃棄されたり放置されたものを捨てるのではなく新しい製品に生まれ変わらせる取り組みをしているということ。「RE:WORK」をできるだけサステナブルにしようとする取り組みは今も努力しているんだ。既存のアイテムを使い、アップサイクルさせることにとても満足しているし、いいスタートがきれたと思う。

—1980年代のアメリカのミリタリーウェアM-65フィールドジャケット、ポンチョライナー・ブランケット、チェコのプルオーバー、 1970年代のイタリアの囚人服など、ユニークな素材をアップサイクルして新たに「RE:WORK」のプロダクトに生まれ変えさせています。今回、このような服に着目した理由は。

僕は昔の服に深い尊敬の念を抱いているのさ。機能の精神性やデザインの目的を理解するために、それらに目を向けることは重要なんだ。この「RE:WORK」のプロジェクトでは、象徴的なミリタリーとか実用性があるものなど、はっきりとした意図をもってつくられたものにフォーカスしてきた。でも、将来的には様々なたくさんのタイプの服を研究したり取り組んでいこうと思っているよ。

「廃棄された服の再生の可能性を探求することは、興味深いプロセスだった。その可能性について考え始めることが重要なんだ」

—「RE:WORK」の大きなコンセプトの一つはサステナブル。ロンハーマンもサステナビリティの取り組みを推進していることで、今回、声をかけていただいたと思うのですが。

重要なのは真の透明性がつくられるべきということ。つまり、十分な情報を得た上で意識的に選択できるようにして、自分たちが何を手に入れているか十分に理解できるようにする。僕たちは服をつくる時のプロセスに影響を与えるすべての要素を理解しようと努めている。そこには明らかにすべきことがたくさんある。僕たちが人々の思考に影響を与えることができて、前向きな行動へと導くことができればうれしいね。「OAMC」が続く限り「RE:WORK」も続く。二つを分けることは決してしない。両者は今や一つなんだ。「RE:WORK」の規模や範囲はもちろん変わるけどずっと「OAMC」の一部であることは変わらない。将来に向けて「RE:WORK」は、いくつかの新しいプロジェクトに取り組んでいる。まだ実現には至っていないけど、できたら知らせるよ。

—それは楽しみですね。ルークさん自身についてお聞かせください。カナダの西海岸で育ったそうですが、少年時代に影響を受けたカルチャー、音楽、アートは。

スケボー、スノーボード、ヒップホップ、パンクロック、それに自然。バンクーバーは太平洋に面し山々や深い森に囲まれて少年時代を過ごすには素晴らしい場所だった。美しい自然に囲まれた環境の中で、賢明で意識が高くセンスのあるグループがいた。彼らは世界中から集まり、多くの影響力をもたらしてくれて、素晴らしい糧になった。こんな経験ができてラッキーだったよ。

—ファッション・デザイナーを志したきっかけは。

いつもデザインの社会学的側面に興味があったんだ。表現、そして人はなぜコミュニケーションの強い手段としてファッションを使うことを選ぶのか。明確なきっかけはないけど僕はいつもこのことに興味を持っていた。金融について学んだ後、それから仕事を求めて1996年にニューヨークに移った。その時、スケボーをして、ニューヨークのエネルギーを感じることが僕にとって最高の経験になると確信した。何か面白い物をつくることに参加したかった僕にとってファッションデザインは自然な流れに思えたんだ。ジェイムス・ジェビア、クリス・ギブス、「Supreme」(シュプリーム)、「Union」(ユニオン)の人たちに会えたことがきっかけになったね。

— 現在、ミラノをベースに活動されていますが、どんな暮らしを送っていますか。また、日本についての印象は。

ミラノはかなり落ち着いた街なのでここにいると、とてもくつろげるんだ。世界中の人に囲まれ、様々な視点から影響を受けている。最近、多くの人がここに移り住んできているので、街のムードが強く動いていると感じている。日本には、2001年に初めて訪れて以来、大きな影響を受けてきた。日本で多くの時間を過ごし、行く度にそこで見たアイデアやクリエイティビティに新たに深い尊敬の念を感じてきた。近いうちにまた日本に行けることを願っているよ。


上質な素材にこだわりシンプルで機能的なデザインが「OAMC」の魅力。デザインはパリで、商品企画と生産はミラノで行なっている。マテリアルからディティールまで、ルークさんの目がいき届いている

— ご自身では、「ルーク・メイヤー」は、どのようなデザイナーだと思いますか。また、デザインのアイデアどこから得ているのでしょうか。

分析するのが好きで感情的な人かな。インスピレーションは、友達、音楽、アートからだね。

— 最後に、ルークさんにとって、ファッション、そして、デザインとは何かをお聞かせください。

僕はファッションという言葉より、スタイルという言葉の方が好き。ファッションはビジネスのようなもの。一方スタイルはその人自身やその人の表現によりかかわるもので、僕が一番気にかけていることだ。“デザイン”は創造へのアプローチで破るべきルールがたくさんあるのさ!

— ルークさん、どうも、ありがとうございました。


Profile
ルーク・メイヤー  Luke Meier
2014年、クリエイティブディレクターとして「OAMC」を手がける。歴史や伝統を尊重しつつ、多様なインスピレーションをもとに、現代の空気感を反映させたメンズウェアを提案。“プレミアム”と呼ぶにふさわしい確かな品質で高い評価を得ている。現在はミラノをベースにマルチに活躍

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