Journal

Ron Herman SOSA

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Ron Herman Journal

Issue 33Posted on Oct 20.2021

天高く澄んだ青空、周囲には緑が濃い里山が広がっています。海からもほど近く、のどかな田園風景の中を、サーフボードを積んだクルマが通り過ぎて行きます。千葉県の北東部に位置する匝瑳(そうさ)市。この自然豊かな街に、この秋、ロンハーマンの新しいストアが誕生しました。と言っても、ここでは洋服や雑貨を販売する訳ではありません。電気を生み出しているのです。



千葉県匝瑳(そうさ)市、自然豊かな里山に囲まれた農地を活用していくつかの「ソーラーシェアリング」が運営されている。ロンハーマン匝瑳店もこの一画に


なぜ、ロンハーマンが電気を。疑問に思う方は多いでしょう。その理由は”Happiness is the Goal.”。ロンハーマンが誕生して以来、私たちは、この言葉を大切にし続けてきました。今世界的に問題となっている〈ファッション業界は世界第2位の汚染産業である〉という事実。

このままではいけない。変えられることは自分たちの手で変えていこう。「幸せ」が自分たちのゴールであり続けるために。


私たちは、2年半ほどかけて準備し、今年5月末に社会や環境へ還元し、真の持続可能な活動をしていくという公約を発表しました。2030年までにカーボンニュートラルを実現、ストアで使用する電気を再生可能エネルギーに……。公約内容は多岐にわたりますが、これまで学びを深める過程で出会ったのが、「ソーラーシェアリング」を手がける「市民エネルギーちば」代表の東光弘さんでした。



ソーラーパネルは高所に取り付けられるので、下の農地で農作業も可能。休耕地では農業をすることで農作物がCO2を吸収、カーボンニュートラルにもつながる。匝瑳店では、まずは麦、次に大豆を栽培して、カフェで活用するという案も


ソーラーシェアリングが、これまでの太陽光発電と大きく異なるのが、ソーラーパネルを設置するのが農地ということ。しかも、高所に設置するので生態系への影響も少なく、従来通り農業が可能なのです。さらに、農家は土地の賃料によって安定した収入を得ることができ、有機栽培など新しい試みにも挑戦できるのです。結果、地域の活性化にもつながります。


「『ソーラーシェアリング』の『シェア』とは『分かち合いましょう』ということなのです」と説明する東さん。「これまでの太陽光発電は環境を壊していると、世の中で嫌われているところがあります。僕たちの場合は、自然環境、農業、地域のコミュニティをすごく大事にしています。そして、“Think Globally, Act Locally”. 地域で活動しますが、意識は全世界、未来にも向いています。その精神性がこれまでの太陽光発電とは、一番大きく違っています。その考えに即して、できるだけ環境負荷が低い自然エネルギーを手かけているのです」



地下の水脈となる暗渠(あんきょ)も、農作物への生育を考えて有機的な工法を用いて、生態系に配慮。「ほとんどのメガソーラでは、コンクリートを打ったり、除草剤や砕石を撒いてしまう。大地は呼吸ができなくて死んでしまいます」と東さん


なんともポジティブ! 私たちのストアで使う電気もソーラーシェアリングでまかなえたら……。そして、東さんに相談するために、ソーラーシェアリングの拠点である匝瑳市に足を運ぶことに。果たして、私たちの思いは伝わるのか。


「発電もデザインです。どんな人と一緒にどんなコミュニティを育みどんなエネルギーを生み出していくか。いいデザインは社会にとっても素晴らしいクリエイションとなります。また、僕たちがビジネスを組む時には約束事みたいなものがあります。それはハートの部分で響き合えるか。太陽光の仕事は、最低でも20年はお付き合いするので、肚の探り合いでは上手くいきません。ですが、ロンハーマンの皆さんに会った瞬間にすぐ、『あっ、この人たちは本物だな。一緒に組みたい、組めるな。一緒に物語を作っていけるな』と、すごくうれしく思いました」



匝瑳店のソーラーパネルの敷設、最終日。ロンハーマンのスタッフも作業の手伝いに。完成を記念して現地のスタッフたちと記念写真。前列中央が今回のプロジェクトをリードしてくれた「市民エネルギーちば」代表の東光弘さん。


ロンハーマン匝瑳店では、リユースの太陽光パネルを使って発電所を建設、クリーンエネルギーを生み出していきます。そして下では有機農業を行うことにより土壌を回復させ、さらに不耕起栽培に切り替えていくことで大気中からのCO2を吸収するというカーボンニュートラルへの貢献もしていきます。


今回のソーラーシェアリングで生まれた電力は、まずはロンハーマン福岡店で利用します。まだまだ発電の規模は小さいですが、東さんとお話をしていると、たくさんの未来志向のアイデアが浮かんできます。農地でコットンを栽培したり、羊を育ててその恵みを服づくりの素材にできないか。ロンハーマン カフェで使用する野菜を育てたり、キッチンで出た野菜くずたちを堆肥にして循環させたらいいのでは。お客様をお招きして、イベントやワークショップを開催できないか……。さまざまな「幸せ」が匝瑳店から生まれていきそうです。新しい「ゴール」への歩みは、今、スタートしたばかりです。



ソーラーパネル、最後の一枚。記念してスタッフが寄せ書きを。トータルのパネルの数は1136枚。一枚一枚にロンハーマンと市民エネルギーちばのスタッフ、地元の方々の思いが込められている

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