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From Zambia, farmers 360° link

From Zambia, farmers 360° link

Ron Herman Journal

Issue 81Posted on Nov 20.2023

天まで澄み切った青い空、乾いた空気とどこまでも続く平原。道なき道を進んで行った先で出合ったのは、たくさんの笑顔でした。ザンビア共和国はアフリカ大陸南部の内陸に位置して、面積は日本の約2倍と広大な国です。別名は“The Real Africa”(本当のアフリカ)。手つかずの雄大な自然、たくさんの野生動物、アフリカの象徴ともいえる美しさが、そこにあるからです。そして、大地に根ざして暮らす人々の姿も……。



ザンビア共和国は、自然と野生動物に恵まれたアフリカの原風景のような国。訪れたのは乾季だったが、雨季にはサバンナの緑が色濃くなる


2023年、ロンハーマンは、この地で新たな試みをしました。それが「farmers 360° link」との取り組みです。「farmers 360° link」の合言葉は「アフリカ農家からあなたの手へ、あなたの手をアフリカ農家へ」。世界中の農家のトレーサブルな生産物とデジタル技術を組み合わせて、お客様と生産者をつなぎ、新たなエシカル消費体験を生み出すことを可能に。その第一弾がザンビアのコットン農家とのコラボレーションです。小規模で環境にやさしい農法でコットンを育てる農家を応援することで、環境負荷の少ないコットン栽培を支援するだけでなく、農家の収入を増やし生活の向上を目指します。



「farmers 360° link」の契約農家のコットンは綿繰(わたく)り工場に集められる。栽培農家を特定するQRコードを袋につけるため、生産者に責任感が生まれる


お客様は、専用のアプリによって自分が購入した服に使われているコットンを栽培した農家を知ることができ、用意された「還元プログラム」からどんな応援をするのか選べるため、生産者とお客様が直接リンク。「還元プログラム」は農家やコミュニティのために使われます。お客様は自分の購入が農家の暮らしを豊かにすることを実感し、農家は持続可能な方法で生活を改善できる、両者にメリットのある画期的な仕組みです。私たちは、その可能性に共鳴して、昨年、コットンの種植えの段階から提携。この春、「farmers 360° link」のコットンを使用したアイテムを、ロンハーマンのお客様へ届けることができました。



契約農家が暮らす農村の一つNguzu(ングズ)村。契約農家122軒のうち60軒の家族が「還元プログラム」のセレモニーに集まった


そして、この秋いよいよ還元プログラムが、農家の皆さんの手に。そのセレモニーの会場となったのは、首都ルスクからクルマで5、6時間ほどの距離にある農村。大木の下に60軒もの農家の家族が集まってくれました。農村といっても日本のように家々が密集しているのではなく、広い範囲に点在しています。電気、ガス、水道というインフラはもとより、クルマも普及していないので、数時間かけて歩いて集まってくれたのです。その歓待ぶりといったら。特に子どもたちは、好奇心で目を輝かせています。セレモニーはキリスト教のお祈りから始まり、村長のスピーチや子どもたちのお礼のダンスと、なごやかな空気に包まれていました。



子どもたちが中心になって「還元プログラム」のお礼のダンスを披露。ザンビア人は日本人と同じようにシャイといわれているが踊りはお手のもの



ソーラー充電器は村を代表して先生に。村の中心である学校に設置されて、子どもたちの学習のサポートや農業の管理に必要な携帯電話の充電に役立てる


「farmers 360° link」で初めてとなる還元プログラムでしたが、現地の希望にこたえて三つを用意。「次回栽培に使用する肥料のクーポン」は、農業生産の向上による収入増加を目的とした応援 。個々の家族の生活が向上することで、地域の発展にもつながります。「トウモロコシと大豆をブレンドしたミール」は、栄養価の高い補助食で子どもたちのすこやかな成長をサポート。そして、「学校に設置するソーラー充電器」。村には電気がないので、夜は真っ暗。電気さえあれば、日が暮れても授業の準備ができ、子どもたちの学習のサポートに役立ちます。ザンビアは一夫多妻制で、兄弟が10人以上という大家族がほとんど。そのうち学校に通える子どもは2、3人ほど。一生村から出ることがない方も珍しくありません。子どもたちにもっと多くの学びを与えたい。みんなの切なる思いが、歓喜につながったのでしょう。



自分たちが栽培したコットンがTシャツに! 驚きとうれしさで思わず歓声が


「自分たちが育てたコットンが服になっている!」。セレモニーでみんなから一番大きな歓声が上がったのが、「farmers 360° link」のコットンで手がけた服と出合った瞬間です。自分たちが栽培したコットンが、実際にTシャツになっているのを見たのは生まれて初めて。口笛を吹いたり、うれしそうに笑ったり、体全体で喜んでいます。私たちも農家の方々に感謝。皆さんが、コットンを一生懸命に育ててくれるおかげで、服づくりができるのです。この一枚にはプロジェクトにかかわった全員の思いが込められています。みんなが一つになれた幸せな時間でした。



ロンハーマンでは「farmers 360° link」のコットンをオリジナルレーベル「8100」のウィメンズで使用。2シーズン目となる現在発売中の23FWのアイテムたち。2024年の春夏からはメンズにも拡大予定


ザンビアで目にした人々の笑顔……。「farmers 360° link」は、人々に喜ばれて幸せになれる手段になりえると、実感できました。ロンハーマンの試みは始まったばかり、まだまだ小さな一歩です。ですが、来シーズンには「farmers 360° link」のコットンの使用量をさらに増やします。将来的には井戸や電波塔など、より農家の暮らし、村づくりに役立つ還元プログラムを用意したいとも考えています。私たちは、これからも誠実にザンビアの農家の皆さんと明日に向かって歩んでいきます。



“本当のアフリカ”、 ザンビア。「farmers 360° link」が未来の笑顔をつくる

 

 

 

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