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KOOKY ZOO

KOOKY ZOO

Ron Herman Journal

Issue 63Posted on Mar 12.2023

かわいらしくてスタイリッシュ! ですが、よく見ると「ん?」と思ってしまうようなユニークなデニムやジャケットたち。アダルトサイズなのにデザインはキッズウエアそのもの。ボタンやステッチなどのディテールも、大人が着れるように忠実にサイズアップ。「かわいい!」。商品を目にしたロンハーマンのスタッフたちも、思わず声が。店頭に並んだばかりなのに、人気を呼んで既に完売となったアイテムも。不思議な魅力で私たちを魅了しているのが、ロンハーマンに新しく登場した「KOOKY ZOO」(クーキーズー)です。



ロンハーマン別注の「KOOKY ZOO」(クーキーズー)のブルゾン。「キッズウエアにしかない服は意外にあります。この半袖のブルゾンはまさにそう。子どもはアクティブだから、長袖だと暑がってしまうんでしょうね。そのような背景もすごくおもしろい」とデザイナーの鈴木裕輔さん


手がけるのはデザイナーの鈴木裕輔さん。長年、アメリカの老舗デニムブランドのメンズデザイナーとして活躍してきましたが、2021年、「自分らしさを100パーセント出した服づくりをしたい」と独立。幼少のころからアメリカのヴィンテージウエアや玩具や雑貨が大好きだったこともあり、アメリカの古着をベースにいろいろなアレンジを加えてほかにはない独自の服づくりをしようと思い立ちました。


「自分らしさ」とは何か。鈴木さんには忘れることができない一着の古着があります。学生時代に出会ったエンジニアジャケットです。「えりがなくて、丈がとても短い。見た瞬間に心がときめいたのですが、ワークウエアといえばカバーオールという風潮でしたので、周りの人は『何、この服?』という反応。ですが、自分はその風変わりな服にとてもひかれました。ボロボロでしたが、お財布の事情も考えずに手に入れました。周りは興味がないけど、自分だけがすごく無性にひかれるもの。自分のつくる服もそうありたい。誤解を恐れずに言えば、万人に受ける服ではなくて、千人に一人、万人に一人でも、何か無性に気になってしまう服をつくりたいと思いました」。



キッズサイズを大人が着れるように”等倍”にサイズアップした「KOOKY ZOO」の「JUVENILE」(ジュブナイル)シリーズ。そのコンセプトの象徴といえるのがデニムのパンツとジャケット



アメリカの三大デニムブランドのメンズデザイナーという経験を生かして、1960年代のデニムのディテールを精緻に再現。「縫製に使う糸はポリエステルではなくて、当時を意識して綿の糸で縫っています」


そして、生まれたのが「KOOKY ZOO」です。直訳すれば「不思議な動物園」。動物が生き物として多種多様なように、服もそれを着る人の個性も輝けば、という意味が込められているのです。鈴木さんが「自分らしさ」をさらに追求したのが、「JUVENILE」(ジュブナイル)シリーズです。ヴィンテージウエアを収集することが趣味の鈴木さんですが、とりわけ惹かれてきたのがキッズウエア。見た目もかわいらしくて色遣いもポップ。大人が着たらどうなるのか……。こうして、キッズサイズをアダルトサイズに“等倍”するというコンセプトが誕生したのです。



ロンハーマン千駄ヶ谷店で開催された「KOOKY ZOO」のポップアップショップでは、ウエアの他にカラフルなミニトートバッグもラインナップ


驚くのは、そのつくりの細かいこと。使う糸の太さ、ジッパーの大きさ、ボタンのサイズなど、細部までサイズを“等倍”にアップすることにとことんこだわっているのです。「すごく細かい仕事をしている」と同業者から驚かれることもあるそうですが、鈴木さん本人は「自分はこういう作業が好きなので楽しんでいます」と気に留めず。「現場の工場では『これをどう再現しようか』という現実的な問題がありましたが、設備がまずないんですね。例えば太い幅のダブルのステッチをしようとすると、通常のミシンでは縫えない。ですのでオーダーしてつくってもらいました。今のパートナーの工場は何とかカタチにしようとしてくれています。一緒にものづくりを楽しんでくれているのでは」。



幼少期からアメリカのキッズ向けの雑貨や古着が好きだった鈴木さんのコレクションの一部。かわいらしさや彩りのにぎやかさは「KOOKY ZOO」の世界観とあい通じる


服づくりの楽しみと苦しみから生まれる「JUVENILE」。鈴木さんが、そこまでこだわるのには理由があります。「ちょっとコミカルに見えかねないデザインをしていると思うんですよ。なのでつくりはあくまでもヴィンテージウエアのルールにのっとっています。デニム玄人というか、デニムが好きな人から見ても『あ、なるほど』と思えるようなものづくりを意識しています」。結果「JUVENILE」は、鈴木さんの予想を超えて大きな反響を呼びました。当初「KOOKY ZOO」はシーズンごとにコンセプトを変えていく予定でしたが、当面は「JUVENILE」をブランドの柱としていくことに。


「KOOKY ZOO」は、これまでメンズのセレクトショップでの扱いがメイン。ウィメンズのストアに本格的に進出するのはロンハーマンが初めて。「とてもうれしかったです。メンズのバイヤーの方とは全く違う目線の意見とか感想をいただいて。『あっ、そういう見方もあるんだな』と。自分としてはメンズ・レディスと分けてはいなかったし、ブランドとしてはユニセックスブランドともうたわない。つくり手からセグメントしないで、そこはふんわりとさせています」


 


これからのシーズンに活躍しそうなロンハーマン別注のホワイトデニム。ベルトはイタリアのレザーブランドのカウレザーを日本で加工。ベジタブルタンニンのナチュラルな風合いとホワイトデニムの相性は抜群


「本当に自由に着てもらいたいなと思います。ジーパンを買う時はウエストに合わせて『何インチを買おう』と考える方が多い。そうではなくて、『自分はウエストがすごく細いけど、あえてオーバーサイズではきたいから大きいサイズを買おう』とか、そういう風に自由に楽しんでもらえると、デザイナーとしてはすごくうれしいですね」。今後は、ニットやカットソー、シューズやヘッドギアなども手がけていくそう。「KOOKY ZOO」の新しい仲間に出会えることが楽しみでなりません。



「KOOKY ZOO」は今後も「JUVENILE」シリーズをメインに服づくりを展開。デニムをベースにアイテムのバリエーションも増えていく

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