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CROSS TALK02 “ebure” 古屋ユキさん【後編】

CROSS TALK02 “ebure” 古屋ユキさん【後編】

Ron Herman Journal

Issue 17Posted on Mar 30.2021

ロンハーマンにかかわる方を迎え、さまざまなお話をうかがいます。第2回目のゲストはebureのチーフデザイナー古屋ユキさん。ホストはロンハーマン ウィメンズバイヤー福田円(まどか)です。

つくり手が楽しまなければ。ワクワクから生まれたボタニカルダイ


古屋:草木染めをうたうブランドはとてもコンセプトがしっかりしていて、「このシーズンだから、この花でいきたい」とか、どちらかというと原料から入るところの方が多いと思います。私たちもそこから考えていったのですが、「ebureらしさって何だろう」と立ち戻った時に、「色から入ろう」となったんですね。他のブランドの流れとは逆パターンです。そして、福田さんから別注のお話をいただいた時に、希望の色をうかがったら、「ピンクをやりたい」と。「やっぱりね」みたいな(笑)。

福田:「やっぱり」なんですね(笑)。ピンクって見ているだけですごく心が元気になるし、パワーがもらえる色だなと思って。服のサンプルを拝見して、「もう絶対、ピンクだったらかわいい!」と。


ebureへのボタニカルダイの別注によって、自身もワクワクする体験をすることができた、とうれしそうに語るロンハーマン、ウィメンズバイヤーの福田円(まどか)


古屋:正直言って、はじめはとても驚きました。ボタニカルダイで鮮やかなピンクって、まったく草木を感じない色なので。だけど、ロンハーマンらしいなとも思いました。最初に福田さんからリクエストがあったのは、もう少しだけ落ち着いたピンクだったけれど、それだったら「こんなにたくさんの色が出せるんだよ」という世界観を、直接見てもらった方がいいんじゃないかなと思ったんです。それでボタニカルダイの事務所に、一緒に来ていただいたんです。「絶対にもっと違う色をやりたくなるだろうな」と思って(笑)。

福田:思惑通りだったのですね(笑)。「本当にすごいよ」と言われていたので、想像はしていたのですが、思ったよりすごくて。ウズウズとパニックになるぐらい素敵な色がいっぱいありました。いろんな染めの原料が入った瓶が壁一面に並んでいて、ちょっと見慣れない雰囲気でしたね(笑)。

古屋:あの会社は本当にすごいんです。原料は環境に害を与えないレベルで育った草木や廃棄物なども使ったりと自然にも配慮をしているんですよ。


ロンハーマンのebure別注のボタニカルダイのメインアイテムはアジサイが原料。ボタニカルダイで、このように鮮やかなピンク色が表現できるとは驚き


福田:そうなんですね。今回、ここまで古屋さんと一緒にどこかに行ったりして、服をつくり上げたのは初めてだったのでおもしろかったです。

古屋:やはり、服づくりにはそういう楽しさがないと。バイヤーさんは、完成したものを見るじゃないですか。服づくりを一緒にやって、その世界を見ていただけたら、と思って……。ピンク色はいろんな植物から出せますが、今回選んだのはアジサイ。今、私が着ているebureのボタニカルダイも実はアジサイなんです。せっかくのコラボレーションだったら、同じ花だけど違う色を出せるという見せ方をしたい、と思ったんです。研究所の方に教えてもらいながら、楽しみながら色づけをしました。そういうつくり手のワクワク感は絶対に服に表れるので、体験してほしかったんです。

福田:はい。予想を超えたかわいさに仕上がりました。



ebureらしいボタニカルダイとは何か。立ち戻って考え出た答えは、「どんな原料を使うではなく、どんな色を表現できるか」とチーフデザイナーの古屋さん


古屋:ロンハーマンらしくなりましたね。ebureのスタッフは「この色でいいんですかね。大丈夫ですかね」と心配していたんですけど、私はワクワクしていました。ロンハーマンはセレクトショップだから、いろんな服の間にこういうピンクが入っても、見せ方が上手だし違和感がないんです。しっくり馴染むんですよ。そういう単体のブランドではなかなか表現できないおもしろさがありますよね。

福田:この服を着たら、すごく気分が上がると思います。元気がない時にも着て、洋服の力を身に着けてもらえれば。化学染料の色とボタニカルダイの色は奥行きが全然違うので、すごく色に強さや力があると思います。

古屋:パッと着て、気分が上がっていただけるんだったら、本当にこんなにうれしいことはないですよね。ボタニカルダイは今季だけではなく、ずっとやっていきたいと思っています。今回は初めてということもあり、ebureの中でも目立っているのですが、お客様に「これはボタニカルダイです」とアピールしなくても、「あ、素敵な色」と手に取ってもらえたら。そのような自然の原理みたいなところが、それを身に着けることによって、心が癒されたりだとか、安心感を感じることに結びつくのかと思っています。


ボタニカルダイは一つの植物からさまざまな色を表現できる。その可能性を示すために、同じ植物でebureとロンハーマン別注で異なる色をつけた。ハーブでも人気の「マロウブラック」で染めたナチュラル天竺のTシャツ。奥がロンハーマンの別注


福田:古屋さんがおっしゃったように、「ファッションって楽しいものだ」というのが、最初にないと。お客様がワクワクして手が伸びた服が実はボタニカルダイで、環境にも配慮されているものだったらさらにいいですよね。また、一緒に何かやらせてください。

古屋:ぜひ。また「えっ、この色で別注!」と驚かせてください(笑)。

福田:はい(笑)。今回はお話しできて楽しかったです。ありがとうございました。



-Brand Profile-

ebure(エブール)

2016年、アウターだけのカプセルコレクションをロンハーマンで展開。2017年春夏から本格的にスタート。“さらに人生を楽しむという気持ちを掻き立てる服”をデザインと上質なクオリティで提案。大人の女性を美しく見せるパターンやシルエットで、年代を超えて多くの人々から支持される。



今回のボタニカルダイの別注では、服づくりの時間を共有した二人。「また一緒にワクワクする服づくりを」と意気投合。ロンハーマンとebureの新しいコラボレーションが楽しみだ

 

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